ハンドメイド作品の材料費を正しく経費として計上するためには、適切な勘定科目を使い、正確な仕訳を行う必要があります。
どの勘定科目を選べば良いのか、仕訳はどのように行えばいいのかなど、初めはわからないことが多いかもしれません。
この記事では、ハンドメイド作家向けに材料費に関する勘定科目や仕訳の基本を、分かりやすく解説します。
本記事のポイント
- ハンドメイドの材料費に使うべき勘定科目の種類
- 「仕入高」と「消耗品費」の具体的な使い分け方
- 材料を購入した際の具体的な仕訳方法
- 確定申告で損をしないための在庫管理の重要性
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ハンドメイド材料費の勘定科目の基礎知識
このセクションでは、ハンドメイドの材料費を会計処理する上での基本的な考え方を解説します。
「仕入高」や「消耗品費」といった主要な勘定科目の役割や、材料費が経費になるタイミングなどについて具体的に見ていきます。
ハンドメイドの材料費は経費になる?
ハンドメイド事業で購入した材料の代金は、もちろん経費として計上できます。
しかし、注意すべき点があります。それは、材料を「購入した時点」で即座に全額が経費になるわけではない、ということです。
国税庁が示すルールでは、その年の必要経費となる金額は、売上と費用を対応させて計算します。
材料費の場合、「売上原価」として、以下の計算式で求められた金額のみがその年の経費になります。
- 売上原価 = 期首の在庫材料の金額 + その年に仕入れた材料の金額 - 期末の在庫材料の金額
年末時点でまだ使っていない材料や、完成していても売れていない作品の材料費分は、その年の経費には含めず、「棚卸資産」として翌年に繰り越す処理が必要です。
この「期末棚卸」という手続きが、正確な利益計算と税額の算出に不可欠です。
白色申告でも青色申告でも、最終的に用いる売上原価の計算方法は同じです。
材料代の勘定科目は何費を使うべきか
ハンドメイドの材料代を仕訳する際に主に使用する勘定科目は、「仕入高」と「消耗品費」の2つです。
どちらを使うべきかは、その材料によって判断します。
一般的に、作品の主要な部分を構成する材料(例:バッグの生地、アクセサリーのメインパーツなど)は「仕入高」として処理します。
材料の購入に要した送料(引取運賃)なども取得価額の一部と考えられるため、仕入高に含めて計上するのが一般的です。
仕入高で処理した材料は、期末に在庫として残っていれば所得税法上の棚卸資産に該当し、必ず棚卸の対象となります。
一方で、制作過程で消費される補助的な材料や、金額が小さく管理が煩雑なもの(例:ミシン糸、接着剤、ごく小さなビーズなど)は「消耗品費」として処理することが多いです。
大切なのは、一度設定したルールを毎期継続して適用すること(継続性の原則)です。
仕入高と消耗品費の違いは?
「仕入高」と「消耗品費」の最も大きな違いは、期末の棚卸(在庫計上)に対する考え方です。
どちらも経費である点は共通していますが、会計上の扱いが異なります。
以下の表で、それぞれの特徴と使い分けの例をまとめました。
| 項目 | 仕入高 | 消耗品費 |
|---|---|---|
| 概要 | 製品の主要な構成要素となる原材料の購入費用 | 補助的な材料や、制作過程で消費される物品の費用 |
| 具体例 | 布、革、貴金属パーツ、天然石など | ミシン糸、接着剤、塗料、作業用手袋など |
| 期末の棚卸 | 必要(未使用・未販売分は在庫として資産計上) | 原則として対象(ただし、毎年の使用量がほぼ一定で、著しく増加していない場合は省略可) |
| ポイント | 売上原価を構成するため、正確な利益計算に直結する | 在庫管理の手間を考慮し、実務上の省略規定が設けられている |
注意点:消耗品費の棚卸を省略できるケースについて
「消耗品費」として仕訳した支出であっても、期末に未使用分が残っている場合には、その部分は「貯蔵品」などの資産勘定に振り替えるのが原則です。
ただし、次のような場合には実務上、省略しても差し支えないとされています。
通常の年と比べて特に増えていない消耗品で、金額や数量が少ない場合は、棚卸を省略してもよい
(出典:国税庁『決算の手引き(個人事業者用)』、販売費及び一般管理費等)
つまり、毎年ほぼ同じ量の材料や事務用品を少額購入して使っている場合、年末時点で未使用の少量の消耗品をいちいち棚卸ししなくても、経費から除外せずにそのまま計上できるということです。
しかし、「消耗品費は棚卸が絶対に不要」というわけではない点には注意が必要です。
どうしても気になることや分からないことがあれば、税務署や税理士などに確認することも検討してください。
ハンドメイド材料費の帳簿のつけ方と仕訳例
ここでは、ハンドメイド材料費の帳簿付けや仕訳例、確定申告の注意点などを具体的に解説します。
青色申告と白色申告の会計処理の違いについて、確認することができます。
帳簿の付け方
帳簿付けは、モノの流れとお金の流れを正確に記録することが中心となります。
基本的なプロセスは以下の通りです。
- 材料の購入: 材料を購入したら、レシートや領収書を必ず保管します。
- 帳簿への記帳: 購入日、購入先、金額、勘定科目(仕入高 or 消耗品費)を帳簿に記録(仕訳)します。
- 作品の販売: 作品が売れたら、売上日、販売先、金額を記録します。
- 期末の棚卸: 年末(12月31日)時点で、手元に残っている材料や完成品の在庫を数え、その原価を計算します。
- 決算整理仕訳: 棚卸の結果を基に、在庫分を資産に振り替える仕訳を行います。
この一連の流れを管理することで、一年間の正確な利益を把握できます。
仕訳例
個人事業主の帳簿付けは、提出する確定申告の種類によって求められるやり方が異なります。
- 白色申告: 簡易帳簿での記帳が認められています。これは、お小遣い帳のように、取引を一つずつ記録していくシンプルな方法です。
- 青色申告(最大65万円控除): 複式簿記での記帳が必須です。これは、すべての取引を「借方」と「貸方」の2つの側面から記録し、貸借が必ず一致するように管理する正規の簿記ルールです。
以下に、同じ取引がそれぞれの申告方法でどのように記録されるかを見ていきましょう。
例1:現金で材料の布を10,000円分購入した場合
【青色申告(複式簿記)の場合】
複式簿記では、「仕入高(費用)の発生」と「現金(資産)の減少」という2つの側面から取引を記録します。
| 借方 | 貸方 |
| 仕入高 10,000円 | 現金 10,000円 |
【白色申告(簡易帳簿)の場合】
簡易帳簿(経費帳)では、「何に」「いくら使ったか」という事実をシンプルに記録します。
| 日付 | 勘定科目 | 摘要 | 金額 |
| 10/10 | 仕入高 | 手芸店にて材料(布)購入 | 10,000円 |
例2:個人のクレジットカードで接着剤を2,000円分購入した場合
【青色申告(複式簿記)の場合】
「消耗品費(費用)の発生」と「事業主からの一時的な借入(負債)」という2つの側面で記録します。
| 借方 | 貸方 |
| 消耗品費 2,000円 | 事業主借 2,000円 |
なお、事業用のクレジットカードを使用した場合の仕訳については、購入日と引き落とし日の2回に分けて仕訳をするルールになっています。
- 購入時:消耗品費〇〇円/未払金〇〇円
- 引き落とし日:未払金〇〇円/普通預金〇〇円
詳細は、以下の記事を参考にしてください。
この記事では、青色申告をしている個人事業主やフリーランスの方が、クレジットカードを使用した場合の仕訳例や、仕訳の際に注意すべき内容をまとめています。 【PR】おすすめの会計ソフト 詳細[…]
【白色申告(簡易帳簿)の場合】
経費として支払った事実を記録します。
現金支出ではないため、摘要欄にその旨をメモしておくのが一般的です。
| 日付 | 勘定科目 | 摘要 | 金額 |
| 10/10 | 消耗品費 | 材料(接着剤)を個人カードで購入 | 2,000円 |
このように、取引の本質(材料の購入は経費になる)は同じですが、記録する方法に違いがあります。
青色申告で、最大65万円控除を目指す場合は、日々の取引を複式簿記で仕訳していく必要があります。
会計ソフトの特徴とメリット
手書きや表計算ソフトでの帳簿付けも可能ですが、仕訳の知識に不安がある初心者の方ほど、会計ソフトの利用がおすすめです。
現在の会計ソフトは非常に使いやすく設計されており、銀行口座やクレジットカードを連携すれば、取引データを自動で取り込んでくれます。
利用者は、取り込まれたデータに対して、あらかじめ設定したルールに基づき勘定科目を割り振るだけで、複雑な複式簿記の帳簿が完成します。
例えば、「〇〇手芸店からの支出は仕入高」といったルールを設定しておけば、次回以降の入力は自動化され、作業時間を大幅に短縮できます。
確定申告書類の作成もサポートしてくれるため、経理業務の負担を大きく軽減してくれるでしょう。
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確定申告の注意点
ハンドメイドの材料費を正しく処理することは、確定申告で正確な所得を申告するために不可欠です。
一年間の売上から、売上原価(期首在庫+今年の仕入-期末在庫)と経費を差し引いたものが所得となります。
もし期末の在庫を計上し忘れると、その分だけ売上原価が過大に計上され、所得が不当に低く計算されてしまいます。
これは、納めるべき税金を少なく申告したことになり、後日、税務調査などで指摘された場合には、追加の税金やペナルティが課される可能性もあります。
したがって、面倒に感じるかもしれませんが、年末の棚卸は必ず行い、正しい材料費を計上することが、適切な確定申告につながります。
まとめ:ハンドメイド材料費の勘定科目
この記事では、ハンドメイド材料費の勘定科目や仕訳について解説しました。
ポイントは、作品の主材料を「仕入高」、補助的な材料を「消耗品費」などに区別し、自分なりの一貫したルールで処理することです。
仕入高で計上した材料は、売上原価を構成するため、年末の棚卸作業を通じて正確な在庫額を把握することが、適正な利益計算と税額申告の基礎となります。
日々の仕訳を会計ソフトなどを活用して効率的に行い、年に一度の棚卸を確実に行うことで、ハンドメイド事業の経理は決して難しいものではなくなります。
正しい知識を身につけ、安心して創作活動に集中できる環境を整えましょう。

