個人事業主やフリーランスの中には、国民健康保険料や国民年金が高くて困ると感じている方も多いのではないでしょうか?
個人事業主などの自営業者の場合、保険料は全額自己負担ですが、会社員が加入している社会保険料(健康保険や厚生年金)は会社が半分払ってくれます。
しかも、健康保険や厚生年金のほうが保証が充実、貰える年金額も多いですから、かなりの不公平感を感じるかも知れませんね。
ところが、個人事業主やフリーランスなどの自営業者の方でも、Wワークでパートやアルバイトをしていれば、一定の条件を満たすことで社会保険に加入することができます。
今回、この内容について書こうと思ったのは、以前書いた下記の記事に安定してアクセスがあるからです。
参考記事:個人事業主(自営業)がパートやアルバイト収入を得た場合の仕訳と確定申告
自営業を行う傍ら、パートやアルバイトなどの副業を行っている人や、Wワークを検討している人が多いのではと考えました。
もし、現在パートやアルバイトなどのWワークをしていたり、こうした働き方を検討しているのであれば、是非これからご説明する内容を確認していただきたいと思います。
個人事業主が社会保険(厚生年金・健康保険)に加入できる要件
パートやアルバイトをしている場合、一定の要件を満たすことで健康保険や厚生年金に加入することができます。
その要件は次の通りです。
- 働いている会社の従業員数が501名以上(厚生年金の被保険者数)
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 賃金月額が月88,000円以上(年収106万円以上)
- 勤務期間が1年以上と見込まれる
- 学生でない
これは、自営業者がWワークとしてパートやアルバイトをする場合も当てはまります。
健康保険や厚生年金に加入できれば、国民健康保険や国民年金を支払う必要がありません。
先程もふれましたが、健康保険や厚生年金は会社が半分負担してくれます。
さらに、お得なのはそれだけではありません。
実は、自営業の収入とパートやアルバイト収入がある場合、健康保険や厚生年金の社会保険料はパートやバイトで得られる収入のみで計算します。
個人事業主が得ている事業収入と、パートやアルバイトで得られる給与収入は、被保険者種別が異なるので収入を合算する必要がないからです。
詳しくは、下記の社労士さんの記事が参考になると思いますので、ご紹介しておきたいと思います。
今後は社会保険の適用範囲が拡大する
2022年以降、パートやアルバイトなどの労働者が、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入できる要件に変更が加えられます。
2022年以降の主な変更点については、次の通りです。
2022年10月~
- 1年以上の雇用見込み→2ヶ月以上の雇用見込み
- 従業員数501名以上→101名以上
2024年10月~
- 従業員数101名以上→51名以上
ここまでは、変更が決まっています。
2025年以降~
- 従業員数51名以上→企業規模要件は撤廃される可能性がある
このように、パートやアルバイトとして働く労働者が、社会保険に加入できる要件は緩和されていく流れとなっています。
Wワークを検討する個人事業主やフリーランスの方は、今後の要件の変更についても確認しておきましょう。
保険料はどのくらいお得になる?
仮に、個人事業主やフリーランスの方が収入を増やしたいと思い、パートの副業を始めて月10万円の収入を得ているとします。
そして、本業の事業所得は月40万円あるとします。
この場合、月40万円の事業所得は保険料の計算には反映されません。
ですから、この例の場合は月10万円の給与収入によって保険料が計算されます。
例えば、東京在住のフリーランスの方が上記の収入を得ている場合、保険料は次のようになります。
健康保険料(9.9%、11.63%)
介護保険第2号被保険者に該当しない場合(9.9%)
- 全額・・9,702円
- 折半額・・4,851円
介護保険第2号被保険者に該当する場合(11.63%)
- 全額・・11,397.4円
- 折半額・・5,698.7円
厚生年金保険料(18.3%)
- 全額・・17,934円
- 折半額・・8,967円
参照:平成31年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
給料から天引きされる金額は、折半額になりますので健康保険料と厚生年金保険料を合わせても、売上が月額40万円でパートの収入が月額10万円の場合の保険料は、14,000円~15,000円ほどしかかかりません。
月額40万円の事業所得は保険料の計算に含めませんので、これだけ安い保険料となるわけです。
仮に、パートをしないで月額40万円の事業所得だけだとすると、1ヶ月の国民年金と国民健康保険料は下記のようになります。
※経費を月20万、所得控除は基礎控除の48万円のみで計算。
- 国民年金・・16,590円(2022年度)
- 国民健康保険(青色)・・14,250円
- 国民健康保険(白色)・・19,250円
※計算は弥生の個人事業主のかんたん税金計算を使用
あくまでも、ざっくりとした計算ですが、パートをせずに月額40万円の事業所得のみだと、青色申告で約31,000円、白色申告で約36,000円の保険料が毎月かかります。
月10万円のパート収入を増やした方が、保険料は安くなるという結果になるんです。
しかも、半額以下ですよ・・
年間では20万円~25万円くらいは保険料が安くなる、しかも個人事業主でも保証の手厚い健康保険に加入することができます。
さらに、収入は120万円増えるわけです。
ざっくりとした計算ではありますが、少なくともお得な働き方であることは間違いありません。
Wワークの確定申告-税金はどのくらい増える?
事業所得に加えてパートの収入が増えるということは、確定申告の際に支払う税金も増えることになります。
では、どのくらい税金が増えるのかも合わせて確認しておきましょう。
なお、計算結果の所得税の金額は、いずれも復興特別所得税を含めた概算額です。
先程の、月額40万円の事業所得を得ているフリーランスの例(経費は月20万・所得控除は48万のみ)で計算すると次のようになります。
- 青色申告の所得税・・65,000円(青色申告特別控除65万円で計算)
- 白色申告の所得税・・98,000円
次に、このフリーランスの方が月40万円の事業所得に加えて、月10万のパート収入を得た場合の税金を確認して見ましょう。
※他の条件は全て同じとします。
- 青色申告の所得税・・98,000円(青色申告特別控除65万円で計算)
- 白色申告の所得税・・163,000円
青色申告か白色申告かで差がありますけど、所得税だけで比較すると3万円~7万円くらい税金が増えることになります。
住民税も多少増えるので、実際は上記の金額だけではありません。
しかし、税金が増える分を考慮しても保険料が減ることを考えると、年間10万円~15万くらい支出が減る計算になります。
最後に
個人事業主やフリーランスの方が、パートやアルバイトのWワークをする際に、一定の要件を満たしていれば社会保険に加入でき保険料も安くできます。
ただし、1週間の所定労働時間が20時間以上などの要件がありますので、事業に費やす時間なども考慮して、Wワークが可能かどうかを検討する必要があります。
今後は、要件が緩和されていく流れですので、社会保険に加入できるパートやアルバイトの対象者は増加することが予想されます。
もしあなたがWワークを検討しているのであれば、この記事でご説明したような働き方ができるかどうかを検討してみても良いかも知れません。
※この記事の保険料、税金の計算はあくまで概算ですのでご了承下さい。