デザイン作成に便利なCanvaですが、この利用料の勘定科目は何で処理すれば良いのだろうと悩むことはありませんか。
この記事では、Canvaの利用料を経費として計上する際の適切な勘定科目について、具体的な仕訳例を交えながら分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、以下の点について理解を深めることができます。
本記事のポイント
- Canvaに最適な勘定科目
- 具体的な仕訳例
- 個人事業主が行う按分計算の注意点
- AdobeやChatGPTなど他ツールの会計処理
canvaの勘定科目はどう決める?基本的な考え方
Canvaの利用料をどの勘定科目で処理すべきか、その基本的な考え方と会計処理のルールについて解説します。
事業で利用するサブスクリプションサービス全般に共通する知識でもありますので、まずはここでの内容をしっかりと押さえておきましょう。
確定申告での適切な処理や、消費税、按分計算といった具体的なポイントについても触れていきます。
Canvaは必要経費になる?
事業の売上を上げるためにCanvaを利用しているのであれば、その利用料は問題なく経費として計上できます。
なぜなら、経費とは事業に関連する支出であり、Canvaを使って作成したSNSの投稿画像、プレゼン資料、Webサイトのバナーなどが売上に繋がる活動の一環だからです。
ただし、経費として認められるためには、事業で利用したことを証明できる客観的な証拠が必要です。
そのため、Canvaから発行される領収書や、クレジットカードの利用明細は必ず保管しておきましょう。
これらの書類を整理し、帳簿に正確に記録することが、確定申告における基本となります。
プライベートと事業の両方で利用している場合は、事業で利用した分のみを経費として計上する必要があるため、注意が必要です。
一般的なサブスク費用の勘定科目は?
Canvaのようなサブスクリプションサービスの利用料について、どの勘定科目を使うべきかという法律上の明確な決まりはありません。
事業者が、その取引の性質を考えて最も適していると判断した科目を選んで処理します。
一般的には、以下の勘定科目が候補として考えられます。
勘定科目 | 特徴と選択されるケース |
---|---|
通信費 | インターネットを介して利用するクラウドサービスの性質を重視する場合。CanvaやChatGPTなど、データ通信を伴う多くのSaaSに適しています。 |
消耗品費 | ソフトウェアライセンスという側面を重視する場合。使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満の物品やツールに適用される科目です。 |
支払手数料 | サービス利用に対する「手数料」という側面を重視する場合。コンサルティングなど、役務提供の対価として支払う費用にも使われます。 |
広告宣伝費 | 利用目的がチラシやバナー広告の制作に限定される場合。不特定多数に向けた宣伝活動のための支出として処理します。 |
どの勘定科目を選ぶかは事業者の判断に委ねられますが、一度決めた勘定科目は、特別な理由がない限り継続して使用する「継続性の原則」を守ることが会計上のルールとして大切です。
毎年勘定科目を変更すると、期間ごとの比較ができなくなり、税務調査で指摘を受ける可能性も出てきます。
プライベート利用が混在する場合の按分計算
個人事業主の方がCanvaを事業とプライベートの両方で利用している場合、支払った利用料の全額を経費にすることはできません。
事業で使用した割合に応じて費用を分ける「家事按分」という計算が必要です。
これは、個人的な支出(家事費)は事業の経費として認められないという税務上のルールがあるためです。
按分の方法は、客観的で合理的な基準であれば問題ありません。
例えば、以下のような基準が考えられます。
- 利用時間で按分: 週のうち5日間を事業で、2日間をプライベートで利用している場合、利用料の5/7を事業用の経費として計上します。
- 作成したデザイン数で按分: 1ヶ月で作成したデザインのうち、事業用が30個、プライベート用が10個だった場合、利用料の3/4(30個 ÷ 40個)を経費とします。
どの基準で按分したとしても、その根拠を説明できるよう、日々の業務記録や作成したデザインの管理をしっかり行っておくことが鍵となります。
税務調査などで質問された際に、明確な根拠を示せるように準備しておきましょう。
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Canva利用料の消費税とインボイスについて
Canvaはオーストラリアの企業が運営していますが、日本国内で利用した場合、その利用料は日本の消費税の課税対象となります。
これは、Canvaが提供するサービスが「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当し、Canvaの運営会社が日本の国税庁に登録された国外事業者であるためです。
Canva Pty Ltd は国外事業者として適格請求書発行事業者(登録番号 T2700150107555)に登録済みです。
そのため、利用者は支払った料金に含まれる消費税を「課税仕入れ」として、仕入税額控除の適用を受けることができます。
実際に、Canvaから発行される領収書や請求書を確認すると、「日本の消費税(10%)」といった記載が見つかるはずです。
帳簿付けの際は、消費税区分を「課税仕入10%」として処理するようにしてください。
参考:国税庁タックスアンサー No.6118「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係」
具体的な仕訳例
ここでは、Canvaの利用料を「通信費」として処理する場合の具体的な仕訳例を紹介します。
複式簿記のルールに従い、費用の発生(借方)と、支払いの事実(貸方)を記録します。
月額払い(口座振替)の場合
Canva Proの月額利用料1,500円が普通預金口座から引き落とされた場合、仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | 消費税区分 |
---|---|---|---|
通信費 1,500 | 普通預金 1,500 | Canva利用料 | 課税仕入10% |
摘要欄に「Canva利用料」などと記載しておくと、後で見返したときに取引内容が分かりやすくなります。
年額払い(クレジットカード)の場合
Canva Proの年額プラン12,000円をクレジットカードで支払った場合は、支払った日と、実際に口座から引き落とされた日で2回の仕訳が必要です。
クレジットカードでの支払時
この時点ではまだ預金は動いていないため、「未払金」という負債の勘定科目を使います。
借方 | 貸方 |
通信費 12,000円 | 未払金 12,000円 |
利用代金の引き落とし時
後日、クレジットカードの利用代金が預金口座から引き落とされた際に、未払金を精算します。
借方 | 貸方 |
未払金 12,000円 | 普通預金 12,000円 |
このように、支払い方法によって仕訳の仕方が少し異なりますので、状況に合わせて処理を行ってください。
canvaの勘定科目と他ツールの比較・効率化
Canvaだけでなく、Adobe製品やChatGPTといった他のツールを利用している方も多いでしょう。
このセクションでは、それらのツールの勘定科目をどのように考えればよいか、またfreeeなどの会計ソフトを活用して経理業務を効率化する方法について解説します。
ツールごとの違いを理解し、一貫性のある会計処理を目指しましょう。
デザインツールの勘定科目はどう分ける?
デザインツールと一言でいっても、その利用目的は多岐にわたります。
そのため、勘定科目は利用実態に合わせて使い分けるのが合理的な考え方です。
例えば、以下のように目的別に科目を設定することが考えられます。
- 広告宣伝費: クライアント向けの広告バナーやチラシの制作が主な目的の場合。
- 消耗品費: 主に社内で使用するプレゼン資料やマニュアル作成が目的の場合。
- 通信費: SNS投稿画像の作成など、日々の情報発信活動が主な目的の場合。
このように利用目的で勘定科目を分けることで、どのような活動にどれだけのコストがかかっているかを詳細に分析できるメリットがあります。
一方で、複数のツールを様々な用途で利用している場合、毎回目的を判断して仕訳を行うのは煩雑になる可能性もあります。
個人事業主や小規模な事業者の場合は、管理の手間を考慮し、デザインツール関連の費用はすべて「通信費」や「消耗品費」に一本化するという判断も有効な選択肢です。
Adobeの勘定科目はCanvaと同じ?
Adobe Creative Cloudなどのサブスクリプションサービスを利用している場合、その勘定科目は基本的にCanvaと同じ考え方で処理して問題ありません。
なぜなら、Adobe Creative CloudもCanvaと同様に、インターネットを介して提供されるソフトウェアサービスであり、取引の性質が非常に似ているからです。
会計の「継続性の原則」に基づき、Canvaを「通信費」として処理しているなら、Adobeも同じ「通信費」で統一するのが望ましいでしょう。
これにより、帳簿全体の一貫性が保たれ、財務状況の比較分析がしやすくなります。
もし、明確な利用目的の違いがある場合(例:Adobeは専門的なデザイン制作、Canvaは事務的な資料作成)は、それぞれを「消耗品費」と「通信費」のように別の勘定科目に設定することも可能です。
Adobeの勘定科目や仕訳例の詳細は、以下の記事で詳しく取り上げていますので参考にしてください。
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ChatGPTなどAIツールの勘定科目
近年利用が拡大しているChatGPT PlusなどのAIツールも、業務で活用していれば経費として計上できます。
これらのツールの勘定科目は、「通信費」または「支払手数料」で処理するのが一般的です。
インターネットを介してサービスを利用するという点ではCanvaなどと同様に「通信費」が適しています。
一方で、情報収集や文章作成といった役務提供の対価と捉え、「支払手数料」として処理する考え方もあります。
どちらの勘定科目を選択しても問題ありませんが、これも一度決めたルールを継続して適用することが求められます。
また、これらの海外サービスを利用する際は、消費税の扱いにも注意が必要です。
サービスの提供元が日本の消費税の登録国外事業者であるかを確認し、適切に課税仕入れとして処理できるかを見極めるようにしましょう。
ChatGPTの勘定科目や仕訳例の詳細は、以下の記事で詳しく取り上げていますので参考にしてください。
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クラウド会計ソフトを活用する
毎月のサブスクリプションサービスの支払いを手作業で帳簿付けするのは、手間がかかり入力ミスの原因にもなります。
クラウド会計ソフトを活用すれば、この作業を大幅に効率化できます。
クラウド会計ソフトの多くは、銀行口座やクレジットカードの利用明細を自動で取得する機能を備えています。
一度、「CANVA PTY LTD」からの引き落としがあった場合に、勘定科目を「通信費」として登録するという「自動で経理」ルールを設定しておけば、次回以降はソフトが自動で仕訳を行ってくれます。
これにより、毎月の入力作業から解放され、帳簿付けの時間を大幅に削減できます。
摘要欄に「Canva利用料」といったメモを自動で追加する設定も可能なため、後から見返したときの管理も非常に楽になります。
このような機能を活用することで、経理業務のミスを防ぎ、より本業に集中する時間を確保できます。
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まとめ:canvaの勘定科目選びと仕訳例
この記事では、Canvaの利用料に関する勘定科目や会計処理について解説してきました。
Canvaの勘定科目に絶対的な正解はなく、「通信費」「消耗品費」「支払手数料」など、事業の実態に合わせて選択することが可能です。
最も大切なのは、一度決めた勘定科目を継続して使用するという「継続性の原則」を守ることです。
また、個人事業主の方が事業とプライベートの両方で利用している場合は、家事按分を忘れずに行う必要があります。
利用時間や作成数など、客観的な基準で事業利用分のみを経費として計上し、その根拠となる記録を保管しておきましょう。
領収書やクレジットカード明細などの証憑書類の保存は、経費計上の大前提となります。
もし勘定科目の選択に迷う場合は、広告宣伝目的であれば「広告宣伝費」、それ以外は「通信費」に統一するなど、自分なりの明確なルールを設けることが、経理処理をスムーズに進めるコツです。
クラウド会計ソフトで会計処理の効率化を図ることや、どうしても判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することも検討してみて下さい。