「スーツ代は経費にできる?」
そんな疑問を抱く事業主の方も多いと思います。
この記事では、個人事業主が仕事の際に着用するスーツ代を、経費計上できるかどうかについて取り上げています。
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経費とは?
最初に、経費にできるかどうかを考える際に、大切な点をおさえておきましょう。
基本的には、仕事をする上で必要な支出について、経費とすることができます。
しかし、仕事の時だけ使用するわけではなく、プライベートでも使用するものについては、全額を経費計上できません。
このような支出のことを、家事関連費と言います。
家事関連費に相当する場合は、合理的な計算をした上で、事業に関係する分のみを経費計上することになります。
一例としては、家賃や水道光熱費などの費用です。
このような家事関連費を経費にするには、下記の点に留意する必要があります。
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
スーツ代についても、基本的には上記の点を考慮する必要があります。
個人事業主のスーツ代は経費にできる?
スーツ代については、税理士によっても意見が分かれるようで、ネットや書籍で調べても経費にできないと主張する人とできると主張する人がいます。
経費にできないという意見の方が多いように感じましたが、経費計上してもいいのではと主張される方も少なからず存在しますので、それぞれの主張の根拠をご紹介したいと思います。
経費にできないと主張する根拠
個人事業主がスーツ代を全額経費にするのは、基本的には難しいと主張する人の根拠としては、主に下記の点が関係しているようです。
- 過去の判例
- 仕事以外で使用しないことの証明が困難
判例については、昭和49年5月30日に京都地方裁判所で行われた裁判で、スーツ代が経費として認められなかったという事実があります。
下記の裁判所の行政事件裁判例集から、その内容の全文を確認することができます。
ただし、ページ数にすると40ページもありますので、読むのは相当大変だと思いますが、情報の出処は明らかにしておきたいと思います。
参考:裁判所 裁判例結果詳細
過去の判例に基づいて、スーツ代は経費にできないと判断されるようです。
ただし、過去にスーツ代が否認されているので、絶対に経費計上できないと断言することもできません。
スーツを仕事で使用していて、仕事以外のプライベートでは一切着用していないことを証明できれば、全額経費にできる可能性はあります。
しかし、そのことを証明するのが大変ですし、金額にもよりますがそこまでして経費にしたい金額かどうかも考慮できると思います。
例えば、仕事で着用しているスーツとプライベートで着用しているスーツが違うことを、毎回写真にとって証拠を残しておくなどして「このスーツは仕事でしか使用していない」と主張すれば、全額経費にできる可能性は0ではないでしょう。
ですが、例えば2~3万円程度のスーツ代だった場合、経費計上できる金額に対してそれを証明するための労力が割に合わないと思いませんか?
数十万円もするようなスーツ代であればまだしも、高額なスーツでなければ経費計上するのは難しいと割り切ってもいいのではと思います。
経費にできると主張する根拠
一方でスーツ代を経費計上できるとする人の主張として、下記の点を挙げる人がいます。
- 特定支出控除
特定支出控除とは、その年に会社員が仕事で必要なものを購入した特定支出の合計額が、「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超える場合に、その超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引ける制度のことです。
その特定支出には、下記の項目が含まれます。
制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
引用:国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
平成24年の税制改正で「特定支出控除」の適用範囲が拡大された結果、衣服代に関しても経費計上が可能になりました。
そして、この衣服代には、サラリーマンが使用するスーツ代も含まれます。
背広など特定の衣服を購入するための支出は、その支出がその方の職務の遂行に直接必要なものであることについて給与等の支払者により証明がされたものは、特定支出となります。
平成28年以降の「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」ですが、次のように計算します。
- その年中の給与所得控除額×1/2
仮に年収が600万円の会社員の場合ですと、給与所得控除額が6,000,000×0.2+440,000=1,620,000円となりますので、その1/2以上ですから、820,000円以上の経費を使わなければ、特定支出控除は利用できません。
スーツ代やその他の経費代で、毎月約7万円ほど使う計算になります。
これほど経費がかかる会社員は少ないと思いますが、制度上はスーツなどの衣服代も経費にできるわけです。
特定支出控除は会社員などの給与所得者が利用できる制度ですが、仕事で必要なスーツ代が会社員に認められるのであれば、個人事業主などの自営業者が事業を行う上で、必要な衣服代を経費計上できないのは不合理との考えから、経費計上できるとの主張をする人がいることも事実です。
上記の点を考慮すると、仕事で使用するスーツについては、全額を経費計上できると判断しても問題がないようにも思えます。
しかしながら、スーツなどは趣味嗜好が反映されやすく、現状では全額を経費として認めてもらうのはハードルが高いと言えます。
税務署でも、スーツ代は否認されるケースが多いようです。
ですが、仕事で使用する必要性が高い場合などは、家事関連費とするのは不自然ではありません。
家事費であれば、事業に全く関係のない支出ですからその費用は経費にできませんが、家事関連費であれば一部の費用については経費計上することが可能です。
ただし、一部を経費として主張する場合は、合理的に計算して計上する必要があります。
例えば、仕事とプライベートで使用する日数などに基づいて、案分計算するなどの方法が考えられます。
このようにスーツ代を経費にできるかどうかについては、税理士でも意見が分かれるような曖昧さがありますが、全額もしくは一部でも経費計上できる根拠を明確に説明できるかどうかを考慮して決定する必要があるでしょう。
スーツ代を経費計上する際の勘定科目と仕訳例
スーツ代は、消耗品費の勘定科目を使うのが一般的です。
例えば、5万円のスーツを事業用のクレジットカードで購入した場合は下記のように仕訳します。
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|---|
購入日 | 消耗品費 | 50,000 | 未払金 | 50,000 |
引き落とし日 | 未払金 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 |
また、現金で購入した8万円のスーツ代を事業8、プライベート2の割合で経費計上する場合は下記のような仕訳になります。
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|---|
購入日 | 消耗品費 | 64,000 | 現金 | 80,000 |
事業主貸 | 16,000 |
最後に
スーツ代を経費にできるかどうかは判断が分かれるところですが、特に高額なスーツ代であれば経費計上したいと考えると思います。
自分で判断できない場合は、一度税理士などの専門家に相談することを検討してみて下さい。