個人事業主が、生計を一にする親族に対して支払う給与については、基本的には必要経費とすることはできません。
しかし、生計を一にする親族であっても、白色申告をしている個人事業主の事業にもっぱら従事している場合、事業専従者控除を使って必要経費とすることが認められています。
今回の記事では、白色申告をしている個人事業主が利用可能な、事業専従者控除について取り上げています。
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事業専従者控除の要件
事業専従者控除は、税務署への事前の届け出は不要で利用することができますが、次の要件を満たしている必要があります。
白色申告者の営む事業に事業専従者がいること。
確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること。
事業専従者控除を受けるには、事業専従者に該当する人がいて、確定申告書に必要事項をもれなく記入することで控除が受けられます。
事業専従者は、次の3つを全て満たす人を言います。
白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。
引用:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
上記の3つの要件全てに該当する場合は、事業専従者とみなされ控除の対象となります。
注意が必要な点としては、事業を開始した初年度です。
”その年を通じて6月を超える期間”は、年の半分以上の期間に当たります。
ですから、中には事業を開始したのが年の途中からだった場合、半分を超える期間、事業専従者として事業に従事していれば必要経費にできるのではと考えるかも知れません。
青色申告で利用できる「青色事業専従者給与」の場合は、年の途中から事業を開始しても2分の1以上の期間、もっぱら事業に従事していれば必要経費にすることが可能です。
しかし、白色申告の場合は、事業を年の途中から開始したとしても6ヶ月を超えている必要があります。
例えば、事業を8月から始めたとして、他の要件は満たしているとします。
ですが、初年度は8月から12月までの5ヶ月間しか事業に従事できないため、白色申告の事業専従者控除は利用できないことになります。
また、事業専従者控除を利用する場合、配偶者(特別)控除や扶養控除は利用できなくなります。
事業専従者控除に加えて、事業専従者控除と配偶者(特別)控除や扶養控除も受けることができれば節税効果は大きくなりますが、残念ながら両方の控除を利用することはできませんのでご注意下さい。
事業専従者控除の計算方法
限度額
イ 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
ロ この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額
引用:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
国税庁のサイトで説明されている、イもしくはロのどちらか低い金額が控除する金額になります。
ロの説明を計算式にすると下記のようになります。
- 事業専従者控除=事業所得等 ÷ (事業専従者の対象人数+ 1)
どちらか低い金額となりますので、計算をした結果が配偶者86万円以下、配偶者以外の親族50万円以下になれば、その計算した金額が控除額となります。
計算結果が配偶者86万円以上、配偶者以外の親族50万円以上となっても、控除できる金額は86万円、50万円となりますので、この金額が事業専従者控除の限度額ということになります。
ちなみに、説明文に事業所得等とありますが、事業所得以外にも不動産所得や山林所得に該当する事業に従事している事業専従者についても、事業専従者控除を適用することが可能です。
具体例
事業者の所得金額や事業専従者の人数によって控除額は変わりますので、具体例をいくつか考えてみたいと思います。
配偶者
事業所得が150万円で、事業専従者が1人(配偶者)の場合、専従者控除の求め方は次のようになります。
150万円÷(1人+1)=75万円
配偶者の場合は上限額86万円です。
配偶者控除の上限額よりも、計算した金額のほうが低いので、低い方の金額が専従者控除の金額となります。
このケースでは75万円となります。
配偶者以外
一方、条件は同じで専従者が子供だった場合は次の通りです。
150万円÷(1人+1)=75万円
配偶者以外の上限額は50万円です。
この例ですと、計算した金額よりも配偶者以外の上限額のほうが低いので、50万円の上限額が専従者控除の金額となります。
配偶者+配偶者以外
事業所得が300万円で、事業専従者が2人(配偶者+子供)の場合、専従者控除の求め方は次のようになります。
300万円÷(2人+1)=100万円
次に、配偶者と配偶者以外の上限額と比較します。
配偶者の場合は86万円、配偶者以外は50万円です。
いずれも、100万円よりも上限額が下回っていますので、この場合の専従者控除の金額は上限額の86万円、50万円を合わせた136万円となります。
他の条件は同じで、事業所得が210万円だった場合は次のようになります。
210万円÷(2人+1)=70万円
この例では、先程と違って配偶者の上限額よりも計算した金額の方が少なくなります。
ですから、配偶者の控除金額は70万円となります。
配偶者以外の場合は、計算した金額よりも上限額が下回っていますので50万円が控除額です。
この例では、専従者控除の金額は70万円と50万円を合わせた120万円になります。