個人事業主の仕訳について分かりやすく解説

  • 2021年1月28日
  • 2024年1月5日
  • 簿記

 

個人事業主の方が自分で会計処理をする場合、「この取引の仕訳の仕方が分からない」と感じることがあるかも知れません。

 

この記事では、個人事業主の方が複式簿記で仕訳するのに役立つ基本的な情報や、仕訳の際に注意が必要なケースなどを取り上げています。

 

よく使う経費の勘定科目

 

最初によく使う経費の勘定科目と、基本的な複式簿記の仕訳について取り上げます。

 

下記は代表的な経費の勘定科目の一例です。

 

勘定科目具体例
租税公課 個人事業税・固定資産税・収入印紙・自動車税・登録免許税・車庫証明手数料など
水道光熱費水道代・電気代・ガス代・灯油代など
旅費交通費電車代・バス代・タクシー代・高速料金代・駐車場代・宿泊費など
通信費電話代・切手代・インターネット代・サーバー使用代・はがき代・携帯代・スマホ代など
広告宣伝費チラシ代・パンフレット代・試供品代・新聞(雑誌)の広告掲載料金・看板代・インターネット広告代など
接待交際費 食事代・お土産代・お中元・お歳暮・ゴルフ代・親睦旅行代など
損害保険料損害保険料・自賠責保険料・任意保険料・火災保険料など
修繕費車・パソコン・エアコン・事務所・機械・備品などの修理代
消耗品費電池・コピー用紙・電球・ペン・ノート・インク・伝票など
減価償却費車・パソコン・バイク・建物など
福利厚生費忘年会・新年会・慰安旅行・健康診断・お茶・コーヒーなど
給料賃金 従業員への給料・賞与・残業手当など
外注工賃システム・デザイン・記事・原稿など
地代家賃事務所・店舗・駐車場・トランクルームなど

 

複式簿記の仕訳については取引の2つの面に着目して、借方と貸方に勘定科目と金額を記入します。

 

経費の支払いは、借方に該当する勘定科目を記入して、貸方に現金や普通預金などの資産の勘定科目を記入します。

 

例えば、タクシー代3,000円を現金で支払った場合は、次のように仕訳をします。

 

借方金額貸方金額
旅費交通費3,000現金3,000

 

経費の増加として借方に旅費交通費の勘定科目を使い、資産の減少として貸方に現金の勘定科目を使って仕訳をします。

 

これが、複式簿記の基本的な仕訳の形ですが、取引内容や決済方法によって注意が必要なケースがありますので続きの内容を確認して下さい。

 

生活費の支払いをした場合の仕訳

 

事業に関係していない生活費を支払った場合は、基本的には仕訳をする必要がありません。

 

ですが仕訳が必要となるケースもあります。

 

例えば事業用口座で、経費の引き落としと生活費の引き落としの両方があるような場合です。

 

生活費の支払いについては、経費と区別するために「事業主貸(じぎょうぬしかし)」という勘定科目で仕訳をします。

 

仮に事業用口座から、2,000円の生活費の引き落としがあったとしたら次のように仕訳します。

 

借方金額貸方金額
事業主貸2,000普通預金2,000

 

口座から支払いをすることで資産は減少します。資産の減少については右側の貸方に記入します。

 

個人事業主の場合、生活費と経費が一緒に引き落とされるケースがあります。

 

例えば自宅で仕事をしている方であれば、家賃・電話・電気代などの支払いなどです。

 

もし事業用口座から該当する支払いがあれば、使用割合を考慮した上で生活費と経費を区別して仕訳をします。

 

例えば電気代が8,000円だった場合、事業で使用する電気代の割合が3割で、個人で使用する電気代の割合が7割だったとすると仕訳は次のようになります。

 

借方金額貸方金額
水道光熱費2,400普通預金8,000
事業主貸5,600

 

生活費と経費の割合を合理的に計算する方法を確認したい場合は、下記の記事を参考にして下さい。

 

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プライベートで買い物をした時の仕訳

 

プライベートで買い物をした場合の仕訳も、基本的な考え方は生活費の支払いと同じです。

 

原則仕訳は不要ですが、例えば仕事で使うものとプライベートで使うものを一緒に購入した場合などは、事業主貸の勘定科目を使って仕訳をして経費と区別する必要があります。

 

仮に、仕事で使う消耗品(4,000円)とプライベートで使うもの(2,000円)を一緒に購入して、現金で支払った場合の仕訳は次の通りです。

 

借方金額貸方金額
消耗品費4,000現金6,000
事業主貸2,000

 

クレジットカードで支払った場合の仕訳

 

クレジットカードを使って経費の支払いをする場合は、カードを使って支払いをした時と口座から引き落とされたときの2回に分けて仕訳をします。

 

例えば仕事で使うために2,500円の消耗品を、クレジットカードで購入した場合の仕訳は次の通りです。

 

日時借方金額貸方金額
決済日消耗品費2,500未払金2,500
引き落とし日未払金2,500普通預金2,500

 

クレジットカード決済は後払いですので、商品を購入した時に一旦「未払金」の勘定科目で仕訳して、引き落とし日に「未払金」の勘定科目を消す仕訳をします。

 

クレジットカードの仕訳については、下記の記事で詳しく取り上げていますので参考にして下さい。

 

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消費税の仕訳

 

消費税の仕訳には、税込形式と税抜方式の2つがあります。

 

税込形式では消費税を含めた合計金額で仕訳しますが、税抜方式では商品の金額と消費税の金額を分けて仕訳します。

 

1例として1,000円(消費税100円)の事務用品を現金で購入した場合、それぞれの仕訳についてご紹介します。

 

税込形式

 

借方金額貸方金額
事務用品費1,100現金1,100

 

税抜方式

 

借方金額貸方金額
事務用品費1,000現金1,100
仮払消費税100

 

消費税の金額を区別して仕訳する税抜方式の場合、使用する勘定科目は「仮払消費税」です。

 

消費税については、期中の仕訳に加えて決算時にも処理が求められます。

 

消費税の仕訳に関しては、下記の記事で詳しく取り上げていますので参考にして下さい。

 

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固定資産を購入した場合の仕訳

 

固定資産を購入した場合は、その購入金額によって仕訳の仕方が変わります。

 

パソコンを例に考えてみます。

 

パソコンは固定資産というイメージがあるかも知れませんが、10万円未満で購入した場合は消耗品として一括で経費処理します。

 

購入金額が10万円以上であれば、工具器具備品などの資産の勘定科目で仕訳して、決算時に耐用年数に応じて減価償却をすることで費用計上します。

 

つまり10万円未満のパソコンは一括で経費計上できますが、10万円以上の場合は原則資産計上して耐用年数に応じて数年にかけて費用化することになります。

 

ただし青色申告をしている個人事業主は、10万円以上~30万円未満のパソコンであれば、一括で経費計上できる特例などもあります。

 

詳しくは、下記の記事で取り上げていますので参考にして下さい。

 

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仕訳帳への記入の仕方

 

取引内容を仕訳帳に記入する際は、書き方のルールを確認しておきましょう。

 

主に記入する内容は次の通りです。

 

項目仕訳帳の書き方
日付取引の発生順に記入します。
摘要仕訳や取引内容を記入します。記入には幾つかのルールがあり、勘定科目には()をつけることや、仕訳の際に借方項目は左側、貸方項目は一段下の右側に記入するなどの書き方を抑えておきましょう。
元帳元帳には、総勘定元帳の番号(ページ数)を記入します。
借方
貸方
摘要欄に記入した仕訳の金額を記入します。

 

文章だけの説明ではイメージし辛い場合は、仕訳帳の記入例などを画像で具体的に説明している下記の記事をご覧ください。

 

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会計処理が面倒な場合は効率化も検討しよう

 

仕訳の処理が面倒に感じる場合は、クラウド会計ソフトを利用して効率化を図ることも検討できます。

 

クラウド会計ソフトであれば、口座やクレジットカードの取引データを自動で取得してくれるので、会計処理にかける時間を大幅に削減できるからです。

 

例えば、弥生・freeeなどのクラウド会計ソフトは、個人事業主に人気です。

 

MM総研の2023年の調査によると、クラウド会計ソフトの事業者別シェアは、弥生が52.8%でfreeeが26.0%となっています。

 

参考:MM総研 クラウド会計ソフトの利用状況調査(2023年3月末)

 

クラウド会計ソフトは無料でお試しができるので、手書きやエクセルで帳簿付けをしている場合は、使い勝手を試してみるのはいかがでしょうか?

 

弥生のクラウド会計ソフトは、青色申告は1年間無料、白色申告は永年無料で利用できます。

 

公式サイト:弥生の詳細はこちら

 

freeeも無料でお試しができ、簿記が苦手な方でも青色申告に必要な決算書を簡単に作成できます。

 

また、農業簿記にも対応しているため、農家の方の利用もおすすめです。

 

公式サイト:freeeの詳細はこちら

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