自営業を廃業して就職するなら「求職者支援制度」の利用を検討しよう

  • 2019年3月19日
  • 2024年12月5日
  • 廃業

 

個人事業主の方で、廃業後に就職をしたいと考えるケースもあると思います。

 

その際に、利用を検討していただきたいのが「求職者支援制度」です。

 

この記事では、求職者支援制度の基本的な情報や、利用するための要件などをご説明しています。

 

求職者支援制度は、2023年4月1日に条件が緩和され利用しやすくなりました。

 

その点についても、ご説明していますので是非最後までご覧ください。

 

自営業(個人事業主)は廃業しても失業保険は貰えない

 

 

自営業者(個人事業主)は、廃業しても原則失業保険は貰えません。

 

失業保険は、雇用保険に加入している人を対象とした制度だからです。

 

ですから、雇用されている人、例えば正社員、パート・アルバイト、派遣社員などで、一定の要件を満たす働き方をしている場合に対象となりますが、自営業者(個人事業主)は自ら事業を営んでおり雇用されている訳ではありませんので、失業保険の対象外となります。

 

ですが、例外として、自営業者が事業だけでなく、パートやアルバイトの仕事を掛け持ちしているようなケースで、労働時間が週に20時間以上などの要件を満たしている場合は対象となる可能性があります。

 

こうした働き方をしている自営業者であれば、雇用保険に加入することができ失業保険の対象となるだけでなく、健康保険や厚生年金に加入することも可能です。

 

この記事では詳しく取り上げませんが、要件等については別の記事で詳しくご説明していますので、確認したい場合は下記の記事も合わせてご覧ください。

 

関連記事:個人事業主がWワーク(パート・アルバイト)すれば社会保険にお得に加入できる

 

これは、あくまでも例外的なケースであり、基本的には自営業者は、廃業しても失業保険は貰えないことを抑えておきましょう。

 

求職者支援制度とは

 

出典:厚生労働省HP

 

ご説明してきたように、廃業した自営業者は原則失業保険を貰えませんが、一定の要件を満たす場合は、求職者支援制度を利用することができます。

 

求職者支援制度とは、再就職・転職・スキルアップ等を支援する制度で、主に次の3つの支援が受けられます。

 

  1. 職業訓練
  2. 就職サポート
  3. 給付金(月10万円)

 

令和3年度には、全国で3万人以上が職業訓練を受講している人気の制度です。

 

利用できる主な職業訓練コースについては下記の通りです。

 

主な訓練コース
基礎
ビジネスパソコン科
オフィスワーク科
ITWEBアプリ開発科
Android/JAVAプログラマ育成科
営業・販売・事務OA経理事務科
営業販売科
医療事務
医療・介護事務科
調剤事務科
介護福祉介護職員初任者研修科
介護職員実務者研修科
デザイン広告・DTPクリエーター科
WEBデザイナー科
その他3次元CAD活用科
ネイリスト養成科

 

このような内容の職業訓練を2ヶ月~6ヶ月の期間、無料で受講することができ、さらに月額10万円の給付金が受けられる訳ですから、かなり魅力的な制度ですよね。

 

仮に要件を満たさず、10万円の月額給付金を受給できなくても、通所手当や寄宿手当を受給できる可能性がありますので、最後まで記事をご覧いただき利用できるかどうかをご確認下さい。

 

求職者支援制度の対象者

 

雇用保険に加入している人であれば、失業してからハローワークで仕事を探す間の生活をサポートするために、それぞれの状況に応じて一定の給付がなされますので、この制度の対象ではありません。

 

求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者が利用できる制度です。

 

ですから、雇用保険に加入していない個人事業主やフリーランスなどの自営業者が廃業した場合、要件を満たしていれば求職者支援制度を利用できます。

 

また、雇用保険に加入できなかったパートやアルバイトの方、就職が決まらないまま学校を卒業した方や、雇用保険受給中に就職が決まらなかった方なども求職者支援制度の対象となっています。

 

求職者支援制度の要件

 

 

求職者支援制度の対象となる方(特定求職者)は次の要件を満たす必要があります。

 

  • ハローワークに求職の申込みをしている
  • ハローワークが支援の必要を認めている
  • 雇用保険被保険者もしくは雇用保険受給資格者ではない
  • 労働の意思と能力がある

 

上記以外にも、年収や資産、過去の利用実績などの要件を満たす方でなければ、この制度を利用することができません。

 

これから、詳しい要件について確認しましょう。

 

2023年4月1日以降の給付金(月額10万円)の要件

 

2023年4月1日以降、求職者支援制度により給付金を受けられる方の要件は次の通りです。

 

  • 本人の収入が月8万円以下であること
  • 世帯全体の収入が月額30万円以下かつ金融資産が300万円以下であること
  • 今住んでいるところ以外で土地や建物を所有していないこと
  • やむを得ない場合を除き、全ての訓練実施日に出席すること
  • 同世帯の方が同時に給付金を受給し訓練を受けていないこと
  • 過去3年以内に、偽りや不正行為などで特定の給付金の支給を受けていないこと
  • 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていないこと

 

職業訓練受講給付金(月額10万円)を受け取るには、上記の要件を全て満たす必要があります。

 

これまでは、世帯全体の収入が25万円以下となっていましたが、世帯全体の収入が月額30万円以下と変更されましたので、求職者支援制度を利用するハードルは多少低くなりました。

 

給付金に関連して注意が必要な点は、1日でも訓練実施日に欠席してしまうと給付金は支給されず、欠席や就職支援を拒否するような状況が続くようなら、それまで受けてきた給付金の返還命令の対象となる可能性があることです。

 

しかし、やむを得ない事情があり、それを証明できる場合はその限りではありません。

 

それでも、全実施日の8割以上の出席が求められますのでご注意下さい。

 

要件が多少厳しめに感じる方もおられると思いますが、無料で就職に必要な知識や技能を学べるだけでなく、要件を満たせば給付金まで受け取れるお得な制度です。

 

要件を満たしている場合は、是非積極的に利用を検討してみて下さい。

 

通所手当の受給要件

 

給付金の対象ではなかったとしても、通所手当の対象である可能性があります。

 

対象であれば、定期乗車券などにかかる料金のうち、月に最大42,500円の給付を受けられます。

 

通所手当の要件は、本人と世帯全体の収入が次の条件に該当すれば対象となります。

 

  • 本人収入・・月12万円以下
  • 世帯収入・・月34万円以下

 

他の条件は、給付金の要件と同様です。

 

寄宿手当の受給要件

 

寄宿手当を受け取れる可能性もあります。

 

寄宿手当は、職業訓練を受けるにあたって、訓練施設に付属する宿泊施設やアパートなどへの入居が必要な場合に、月10,700円を受け取ることができます。

 

ただし、寄宿手当に関しては、明確な受給要件が定められているわけではなく、住居の変更が必要であるとハローワークが認める場合に支給されます。

 

このような制度もありますので、職業訓練にあたり住居の変更が必要な場合は、ハローワークにて寄宿手当の対象となるかを確認してみましょう。

 

求職者支援資金融資制度も利用できる

 

求職者支援資金融資制度とは、求職者支援制度で給付金を受給する予定の方を対象とした貸付制度です。

 

訓練期間中の生活費が不足する場合に、担保や保証人などは不要で利用できます。

 

職業訓練期間の数カ月間、月に10万円の給付金が支給されても、それだけでは生活に不安がある場合、こうした制度を利用することも検討できます。

 

貸付額や利率については、次のとおりです。

 

  • 単身者・・月額5万円×給付金の受講予定訓練月数(最大12)
  • 扶養家族を有する者・・月額10万円×給付金の受講予定訓練月数(最大12)
  • 利率・・2%(信用保証料0.5%)

 

詳細は、厚生労働省のサイトにあるリーフレットで確認できます。

 

参考:求職者支援資金融資のご案内

 

まとめ

 

民間の資格取得の学校に通ったり通信講座を受講したなら、数万円から場合によっては数十万円もかかるような内容の教育訓練講座を無料で受講できるのは大きなメリットと言えます。

 

ただし、テキスト代など一部費用は、本人負担となっていますのでご注意下さい。

 

各都道府県で実施されている職業訓練の情報は、ハローワーク インターネットサービスの「訓練検索・一覧」で調べることができます。

 

職業訓練には、時代のニーズに即したコースが用意されているので、お住まいの地域でどのような内容の職業訓練を受けることが出来るかご確認下さい。

 

条件を満たしていれば、月10万円の給付金も支給されるメリットが大きな制度ですので利用を検討してみて下さい。

 

詳細は、最寄りのハローワークなどで確認して頂きたいと思います。

 

参考:求職者支援制度のリーフレット

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