「毎年の確定申告面倒臭い。税金は多少高くていいから、申告時期になったら必要な書類だけ持っていって、申告会場で税金計算してもらおう!」
白色申告をしていた、以前の私はこんな感じでした。
その後、高い税金について段々ストレスを感じるようになり、税金を安くするにはどうしたらいいのかを調べるようになりました。
その結果、青色申告をすることが、節税効果の高い方法だと知りました。
私は青色申告を始めたことがきっかけで簿記の勉強をするようになりましたが、簿記を学んで本当に良かったと思っています。
以前は、白色申告にも一定のメリットがありました。
事業所得等の合計が300万円以下の白色申告者には、帳簿の記帳義務がなかったからです。
大雑把な申告をしていたとしても、問題にはなりませんでした。
しかし、2014年からは所得金額に関係なく、全ての白色申告者に帳簿の記帳が義務化されました。
そして、同時に帳簿保存も義務化されることになりました。
以前のようなメリットが今の白色申告にはありませんので、どちらにしろ時間をかけて帳簿作成をする必要があれば、節税効果の高い青色申告をしたほうがお得だと思います。
そして、節税効果の高い青色申告をするには、簿記の知識があった方が良いです。
これからその点を、詳しくご説明したいと思います。
個人事業主に簿記の知識は必要?
結論から言いますと、個人事業主に簿記の知識は必ず必要というわけではありません。
なぜなら、白色申告であれば簿記の知識がなくても記帳自体は出来るからです。
しかし、青色申告で最大65万円の特別控除を受けたい場合は、簿記の基本的な知識は必要だと言えます。
理由は、最大65万円の特別控除を受けるには、白色申告よりも複雑な記帳が求められるからです。
近年では、青色申告が容易にできる便利な会計ソフトも普及しています。
そうした会計ソフトの中には、取引データを自動取得してくれて仕訳の際の勘定科目を提案してくれるものがあります。
私も利用していてとても便利なのですが、仕訳の精度は100%ではありません。
間違っている処理については、自分で勘定科目を訂正する必要があります。
また、会計ソフトを使っていても、現金取引などの場合は自分で仕訳を入力する必要もあります。
ですから、もし簿記について知らなければ、会計ソフトを使っていても処理に困ることがあり得ます。
加えて、簿記の知識はただ仕訳をするためだけでなく、決算書の経費や利益などの数字から経営状況を把握したり経営改善を考えたりする点でも役立ちますので、事業主にとっては大切な知識と言えます。
税理士に記帳や確定申告を依頼すれば、簿記の知識を学ばなくても特に困ることはないかも知れませんが、自分で会計処理や確定申告をしたい場合、特に青色申告をしたい個人事業主の方は簿記の基本的な知識があった方が良いでしょう。
個人事業主の簿記方式
簿記には「単式簿記」と「複式簿記」という簿記方式があります。
「単式簿記」は、収支のみを記録する方法です。
白色申告をしている個人事業主の場合、この方式で帳簿付けを行います。
単式簿記と表現されてはいますが、簿記の知識がなくても記帳できます。
一方で、「複式簿記」については簿記の基本的な知識が必要になります。
単式簿記は家計簿をつけるような感覚で記帳することができますが、複式簿記の場合は借方・貸方の考え方を理解していなければ記帳することが難しいからです。
表現を変えると、複式簿記は1つの取引を2つの側面から考えて記帳する方法とも言えます。
簿記を学ぶメリット
青色申告で税金が安くなる
白色申告よりも青色申告の方が、税金を安くすることができます。
青色申告には、10万円と55万円の2種類の特別控除がありますが、55万円のほうが節税効果が高くなります。
因みに、以前は青色申告特別控除は65万円でしたが、現在は55万円に変更になりました。
ただし、一定の要件を満たすことで65万円の特別控除が受けられます。
詳しい内容については、下記の記事を参考にしていただきたいと思います。
これから申告方法の違いで、所得税がどのくらい変わってくるのか一例をご紹介したいと思いますが、青色申告の特別控除は10万円と65万円で計算しています。
●売上が500万円で必要経費が120万円の個人事業主の所得税の計算例
(所得控除は基礎控除38万円のみ。復興特別所得税は省略して計算)
申告方法 | 合計所得 | 課税所得 | 所得税額 |
---|---|---|---|
白色申告(特別控除なし) | 380万円 | 342万円 | 25万6500円 |
青色申告(単式簿記10万円控除) | 370万円 | 332万円 | 23万6500円 |
青色申告(複式簿記65万円控除) | 315万円 | 277万円 | 17万9500円 |
上記の例ですと、白色申告よりも複式簿記で青色申告した方が、7万7000円も所得税は安くなります。
しかも、所得金額や課税所得を低く抑えることができれば、住民税や国民健康保険税も安くなるので、税金の負担額に大きな差が生じることになります。
最初は、多少面倒に感じる青色申告ですが、慣れてしまうと毎年の税金の負担を、白色申告の時よりも少なくできますので、可能であれば簿記を学んで青色申告されるようおすすめしたいと思います。
税理士費用を削減できる
簿記を学んで、自分で複式簿記の会計処理を行えるようになると、税理士などに記帳代行や決算申告をお願いしなくて済むので、その分費用の節約が可能です。
一概には言えませんが、会計処理や決算書・確定申告書の作成を税理士に依頼すると下記の費用が発生します。
税理士報酬の種類 | 年間売上が1000万円未満の税理士報酬の目安 |
---|---|
顧問料(月額) | 毎月 2万~ 3ヶ月毎 1万5000円~ 半年毎 1万円~ |
記帳代行(月額) | +5000円~ |
決算申告(年額) | 月額顧問料の4~6ヶ月分 |
記帳代行から確定申告書の作成までお願いしたとすると、年間で10万~20万円程度は税理士報酬としてかかる可能性があります。
特に、開業したばかりであったり、売上がそれほど多くない状況であれば、上記の税理士費用を払うのは、金銭的な負担が大きいのではないでしょうか?
せっかく青色申告して節税できても、その分が弁護士報酬で消えるとすれば、なんのために青色申告してるのかと感じるかも知れません。
もし、簿記の基本的な知識を学んでおけば、税理士に依頼しなくても自分で青色申告が可能です。
仮に、売上規模が大きくなって法人化を検討するとか、課税売上高が1000万円を超えるようになれば、消費税などの計算も必要になってきますので、そうした状況になったなら税理士に依頼することを検討してもいいかも知れません。
少なくとも、事業が軌道に乗るまでは、自分で会計処理や確定申告をする方が、費用の負担が少なくてすむのでお勧めです。
会計処理の時間を削減できる
会計処理や確定申告を税理士にお願いすれば、その分の時間を他の必要な活動に使うことができますが、同時に高額な費用が発生してしまいます。
だからといって、簿記の知識がない状態で、複式簿記の会計処理や確定申告書を作成しようとすると、わからないことがあるたびに、その都度作業を中断してネットで調べたりする必要がでてきます。
お金はかかりませんが、多くの時間が奪われることになりかねません。
ですから、可能であれば一度簿記の基礎知識だけでも学んでおくことをおすすめしたいと思います。
最初に、勉強時間の確保や多少の費用は必要ですが、学んだ知識はずっと残りますし、毎年受けられる青色申告の節税効果なども考慮すると、個人事業主が簿記を学ぶメリットは大きいです。
日商簿記3級の勉強がおすすめ
簿記を体系的に学びたい場合は、日商簿記3級の勉強をすることをお勧めしたいと思います。
理由は日商簿記3級で学ぶ範囲が、個人商店などの小規模企業の経理処理が対象となっているからです。
日商簿記3級の知識を学んでおけば、個人の青色申告はほぼ問題なくできるようになるはずです。
私は日商簿記2級まで勉強しましたが、個人事業主の青色申告が目的であれば日商簿記3級で十分だと思います。
その点は下記の記事で詳しく取り上げていますので、よろしければ合わせてご覧ください。
私は、個人事業主として青色申告を始めるにあたり、簿記の基本的な知識の必要性を感じ独学で簿記の勉強を始め、日商簿記3級…
簿記や会計ソフトの基礎知識を無料で学べるサイト
もし、記帳作業を税理士や代行業者に依頼する予定がなければ、事業主が簿記や会計ソフトの基礎知識を学んでおくことは大切です。
事業を継続していくうえで必ず役立つ知識です。
この簿記や会計ソフトの基礎知識が無料で学べるおすすめのサイトがあります。
そのサイトは、「CPAラーニング」です。
登録者は、現在50万人を超えており、メールアドレスを登録するだけで、それ以外の個人情報を入力する必要はなく、すぐにサービスを利用できます。
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完全無料で学べるため、簿記や会計ソフトの基礎知識を学びたい場合は、登録だけでもしておくことをお勧めします。
記事のまとめ
この記事では、個人事業主が簿記の知識を持つことの重要性について、当メディアの管理人の経験も含めて取り上げました。
確定申告を通じて節税を図るためには、特に青色申告が効果的であり、そのためには複式簿記の理解が必要です。
簿記の知識があれば、税金を大幅に節約できるだけでなく、経営状況を正確に把握し、経営改善にも役立てることができます。さらに、会計ソフトを使った処理もスムーズに行えるようになり、税理士に依頼するコストを削減することも可能です。
もし、簿記の知識がなくても、無料で簿記や会計ソフトの基礎を学べる「CPAラーニング」などのサイトを利用することで、効率的に必要な知識を習得できます。大手公認会計士資格スクールが運営しており、登録も簡単なので、今すぐ始めることができます。
これを機に、ぜひ簿記を学び、事業の安定と成長に役立ててください。