会議費の勘定科目を解説!交際費との違いや仕訳も紹介

個人事業主やフリーランスとして活動を始めたばかりの方にとって、勘定科目の分類は悩ましい問題です。

この記事では、会議費という勘定科目について、実務上の定義から正しい仕訳方法、個人事業主が押さえておくべきポイントまで、わかりやすく解説します。

 

  • 会議費として認められる費用の具体例
  • 会議費と接待交際費を明確に区別する基準
  • 1人あたり10,000円ルールの正しい理解と必要な書類
  • 個人事業主が会議費を計上する際の注意点
  • 会計ソフトで「会議費」が見当たらない場合の対処法

 

会議費の勘定科目の基本と交際費との違い

 

このセクションでは、「会議費」という勘定科目の実務上の定義から、経理処理で最も混同しやすい「接待交際費」との明確な違いについて解説します。

2024年4月から変更された飲食代の基準(10,000円ルール)についても詳しく触れていきます。

この基本ルールを理解することが、適切な経費計上の第一歩となります。

 

会議費は勘定科目で何と処理しますか?

 

前述の通り、「会議費」は法律で明確に定義された勘定科目ではありません。

しかし、実務上は、業務を遂行する上で必要な「会議」や「打ち合わせ」に関連して支出した費用を処理するための勘定科目として一般的に使用されます。

国税庁も、交際費等の範囲から除外されるものの一つとして「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」を例示しており、これが会議費の根拠の一つとなっています。

具体的には、以下のような費用が会議費に該当します。

 

  • 社内や取引先との会議中に提供するお茶、コーヒー、お菓子代
  • 会議(ランチミーティングなど)で提供する弁当代
  • 打ち合わせ場所として利用したカフェや喫茶店の飲食代
  • 会議のために借りた貸会議室やレンタルスペースの室料
  • 会議で使用するプロジェクターなどの機材レンタル代(「賃借料」などで処理する場合もあります)
  • 会議資料のコピー代や印刷代

 

ポイントは、あくまで「業務上の会議」に付随して発生した費用であるという点です。

 

会議費と交際費の違いをわかりやすく解説

 

会議費と最も混同しやすいのが「接待交際費」です。この二つを区別する最も大きな違いは「目的」にあります。

 

  • 会議費: 業務に関する情報交換や意思決定など、明確な「会議」を目的とします。
  • 接待交際費: 国税庁の定義によれば、得意先や仕入先など、事業に関係のある者に対する「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」のために支出する費用を指します。取引関係を円滑にすることが主な目的です。

 

例えば、新しいプロジェクトについて取引先と議論するためにカフェで打ち合わせをした場合は「会議費」です。

一方で、日頃の感謝を伝えて今後の取引をより良くするために高級レストランで会食をした場合は「接待交際費」に該当する可能性が高くなります。

法人の場合、接待交際費は税務上、損金(経費)として認められる金額に上限(中小法人は原則年間800万円までなど)が設けられていますが、会議費は全額を損金にできます。

参考:中小企業庁 交際費課税の特例

このため、税務調査でも厳しくチェックされるポイントです。

以下に、両者の主な違いを表にまとめます。

 

比較項目 会議費 接待交際費
目的 業務上の会議、打ち合わせ、商談 接待、供応、慰安、贈答、親睦
飲食代の基準 1人あたり10,000円以下(※) 1人あたり10,000円超の飲食、または贈答品など
具体例 会議室代、資料代、会議中の弁当・茶菓子 得意先との会食、ゴルフ、お中元・お歳暮
税務上の扱い(個人事業主) 全額必要経費 全額必要経費(事業関連性が前提)
税務上の扱い(法人・中小企業) 全額損金算入 原則、損金算入に制限あり(例:年800万円まで)

※注:1人10,000円以下の飲食費は、税務上「交際費等から除外される」費用であり、実務上「会議費」として処理されます。

 

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会議費は飲食代としていくらまで計上可能?

 

「会議費」という勘定科目自体に、法律で定められた「上限額」は存在しません。

例えば、会議室のレンタル代がいくらであっても、それが実態として会議に必要な支出であれば会議費として計上できます。

ただし、飲食を伴う場合に注意が必要です。

一般的に「会議費」として認められるのは、会議に付随する常識的な範囲の飲食、例えば昼食(弁当)代やお茶・お菓子代程度とされています。

ここで重要になるのが、次項で解説する「10,000円ルール」です。

これは厳密には「会議費の上限額」ではなく、「飲食費を税務上の“接待交際費”から除外するための基準」を定めたルールです。

この基準を満たす飲食費は、会議費として処理するのが一般的です。

 

新基準!会議費10,000円ルールと国税庁の見解

 

経費処理において非常に重要なルールが、飲食費に関する「1人あたり10,000円基準」です。

これは、令和6年度(2024年)の税制改正により、2024年4月1日以降に支出する飲食費から適用されています。

国税庁の指針では、「1人あたりの金額が10,000円(改正前は5,000円)以下の飲食費」については、税務上の「接待交際費」から除外できる、と定められています。

接待交際費から除外された費用は、実務上「会議費」として処理されます。

 

基準を適用するための条件

 

この基準を適用し、会議費として計上するためには、以下の情報を記載した書類(領収書やレシートの裏面への追記、経費精算書など)を保存しておく必要があります。

参考:国税庁タックスアンサー No.5265(交際費等の範囲と損金不算入額)

 

  1. 飲食等の年月日
  2. 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
  3. 飲食等に参加した者の数(人数)
  4. その費用の金額並びに飲食店等の名称および所在地

 

1円でも超えたら全額が「交際費等」

 

この基準は厳格で、1人あたりの金額が10,000円を1円でも超えた場合、その支出は「全額」が交際費等として扱われます。

例えば、3名で合計33,000円(1人あたり11,000円)だった場合、超過した3,000円だけが交際費になるのではなく、33,000円の全額が接待交際費として処理されます。

 

消費税の扱い

 

この10,000円の判定は、自社が採用している経理処理の方法(税込経理か税抜経理か)によって異なります。

  • 税込経理の場合: 税込10,000円以下で判定します。
  • 税抜経理の場合: 税抜10,000円以下で判定します。

個人事業主の方は、免税事業者や簡易課税制度を選択している場合、税込経理が一般的ですので、「税込10,000円」を基準に考えると分かりやすいです。

 

旧:会議費5000円は交際費に含めますか?

 

2024年3月31日以前の支出については、前述の基準は「1人あたり5,000円」でした。

そのため、古い情報を見ていると「5,000円を超えたら交際費」と書かれていることがあります。

当時の処理としては、「1人あたり5,000円以下の飲食費」は交際費に含めず、会議費として処理することが認められていました。

現在は、この基準が「1人あたり10,000円」に引き上げられています。

2024年4月1日以降の支出については、新しい基準で判断するようにしましょう。

 

会計ソフトに会議費の科目がない場合の対処法

 

会計ソフトを導入した際、デフォルトの勘定科目一覧に「会議費」が見当たらないケースが稀にあるかもしれません。

その場合の対処法としては、まず「接待交際費」や「福利厚生費」など、似た科目の補助科目(内訳)として設定されていないか確認してみてください。

もし本当に科目自体が存在しない場合は、設定メニューから「勘定科目の追加」や「勘定科目の作成」といった機能を使って、新しく「会議費」という科目を追加するのが最も適切です。

主要な会計ソフトであれば、勘定科目の追加は標準機能として備わっています。

「雑費」で処理することも不可能ではありませんが、会議や打ち合わせは事業を行う上で頻繁に発生する経費です。

これらを全て「雑費」として処理すると、後で経営分析がしにくくなるため、専用の「会議費」科目を設けて管理することをおすすめします。

 

会議費の勘定科目の仕訳と具体例【個人事業主向け】

 

このセクションでは、特に個人事業主やフリーランスの方に向けて、会議費の具体的な扱い方や仕訳例を解説します。

社内のみ(自分のみ)の場合の考え方、法人との違い、そして青色申告や白色申告での具体的な記帳方法まで解説します。

 

社内のみの打ち合わせでもOK?

 

「会議費」は、取引先など社外の人が参加している場合に限定されるわけではなく、社内(従業員間)の会議で発生した費用も計上できます。

例えば、従業員を雇用している個人事業主が、事業方針を決めるために社内ミーティングを行い、その際にお弁当や飲み物を提供した場合、これらは会議費として処理できます。

 

社内飲食費に関する注意点

 

ただし、この社内での飲食(会議に伴う弁当代など)については、注意点があります。

前述した「1人あたり10,000円以下の飲食費を交際費から除外する」という特例は、あくまで「社外の者」との飲食が対象です。

したがって、社内のみの飲食費は、この10,000円基準の対象とはなりません。

参考:国税庁:接待飲食費に関するFAQ(社内飲食費の取扱い)

 

社員との「飲み会」は注意

 

また、同じ社内のメンバーとの飲食であっても、目的が業務上の会議ではなく、単なる慰安や親睦(いわゆる「飲み会」や「忘年会」)である場合は、会議費として処理するのは適切ではありません。

このような場合は、以下の科目で処理するのが一般的です。

  • 福利厚生費: 従業員全員を対象とするなど、一定の要件を満たす場合。
  • 接待交際費(社内交際費): 特定の従業員だけを対象とした場合など。

 

自分一人の場合は?

 

個人事業主やフリーランスの方が、自分一人でカフェなどで仕事をした場合の飲食代も、「会議費」として処理することが可能です。

他にも、事業に必要な情報収集や作業場所代として、「雑費」や「新聞図書費」(情報収集が主目的の場合)などで処理することも考えられます。

 

個人事業主の会議費と接待交際費の違い

 

前述の通り、法人の場合、接待交際費には税務上の損金算入限度額があるため、会議費(全額損金)と交際費を厳密に区別する実益があります。

一方、個人事業主の場合、所得税法上には法人税法のような交際費の上限規定はありません。

したがって、接待交際費であっても、それが事業を運営する上で必要な支出(売上につながる支出)であれば、全額を「必要経費」として計上できます。

「それなら、個人事業主は全部『接待交際費』でも『会議費』でも、どちらでも良いのでは?」と思うかもしれません。

確かに税額計算上の最終的な影響は同じかもしれませんが、税務調査の観点からは、これらを適切に分けておくことにはメリットがあります。

10,000円基準などを参考に、「これは会議」「これは接待」と明確に区分して記帳し、必要な書類(領収書への参加者や目的の記載)を残しておくことで、支出がプライベートなものではなく、事業に直接関連していることを客観的に説明しやすくなります。

公私混同を疑われないためにも、ルールに則った経理処理を心がけるのが賢明です。

 

青色申告と白色申告の仕訳例

 

会議費を支出した場合、青色申告(複式簿記)と白色申告(簡易簿記)で記帳方法が異なりますが、経費として計上する基本的な考え方は同じです。

ここでは、青色申告(複式簿記)を前提とした具体的な仕訳例を紹介します。

 

例1:取引先とカフェで打ち合わせをし、代金1,500円を現金で支払った。

 

借方 金額 貸方 金額
会議費 1,500円 現金 1,500円

 

例2:社内会議のため、レンタル会議室(10,000円)と弁当代(5名分 6,000円)をクレジットカードで支払った。(合計16,000円)

 

【カード利用時】

借方 金額 貸方 金額
会議費 16,000円 未払金 16,000円

 

【後日、口座から引き落とされた時】

借方 金額 貸方 金額
未払金 16,000円 普通預金 16,000円

 

白色申告(簡易簿記)の場合は、このような複式簿記ではなく、「帳簿(簡易簿記)」に日付、内容、金額などを記載していきます。

例えば、「10月20日 / 会議費 / 〇〇カフェ(取引先A様と打ち合わせ) / 1,500円」といった形です。

 

雑費の勘定科目について

 

経理に慣れていないと、「よく分からない経費は雑費にしておこう」と考えがちです。

しかし、安易に「雑費」として処理することは推奨されません。

「雑費」とは、他のどの勘定科目にも当てはまらない、重要性が低く、かつ発生頻度も低い経費のための科目です。

クライアントとの打ち合わせや商談は、事業を運営する上で定常的かつ重要な活動です。

これらの費用を「雑費」として処理してしまうと、以下のようなデメリットがあります。

  • 経費内容が不明瞭になる: 「雑費」が膨らむと、何にお金を使っているのかが分からなくなります。
  • 税務調査で説明を求められやすい: 雑費の金額が大きいと、税務調査官は「この中身は何ですか?」と必ず確認します。プライベートな支出が混入していないか疑われやすくなります。

できる限り、会議に関連する費用は「会議費」という専用の勘定科目を作成し、適切に管理するようにしましょう。

 

個人事業主の注意点

 

個人事業主が会議費 勘定科目を取り扱う上で、最も注意すべき点は「公私の区別」です。

法人のように厳格な税務上の損金枠がないからこそ、税務署は「その支出は本当に事業のためか、それともプライベートの支出ではないか」という点を厳しく見ます。

 

プライベートな飲食との区別

 

友人との食事や家族との飲食代は、たとえ仕事の話を少ししたとしても、原則として会議費(経費)にはできません。

事業の経費として認められるのは、あくまで業務遂行上、必要な相手との会議や打ち合わせに伴う飲食です。

 

証憑(しょうひょう)の保存と記録

 

この公私の区別を客観的に証明するために、証憑(領収書やレシート)の保存が不可欠です。

特に、前述した「1人10,000円基準」を適用して会議費として処理する飲食代については、単にレシートを保存するだけでは不十分です。以下の情報をレシートの裏などに必ずメモしておきましょう。

  • 参加した相手の氏名や会社名
  • 参加人数
  • (可能であれば)簡単な会議の目的

このひと手間が、税務調査の際にあなたを守る強力な証拠となります。

 

まとめ:会議費の勘定科目を正しく理解しよう

 

この記事では、会議費という勘定科目について、その実務上の定義から接待交際費との違い、そして個人事業主がどう取り扱うべきかについて解説しました。

会議費の勘定科目を正しく扱うためのポイントは、支出の「目的」を明確にすることです。

それが業務上の「会議」であれば会議費、取引先との「接待・親睦」であれば接待交際費となります。

特に飲食を伴う場合は、2024年4月1日以降の支出から適用された「1人あたり10,000円」という基準が、両者を区別する大きな目安となります。

この基準は「会議費の上限」ではなく、「税務上の交際費等から除外するための基準」である点に注意が必要です。

この基準以下の飲食費は、必要な事項(参加者、人数など)を領収書に記録しておくことで、会議費として処理できます。

個人事業主の方は、法人と違って接待交際費に経費の上限はありませんが、公私混同を疑われないためにも、この基準に沿って明確に経費を区分し、証憑を管理することが、健全な経営と適切な節税の第一歩となります。

これらのルールを理解し、日々の記帳業務に役立ててください。

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