業務用のパソコン修理や、万が一のデータ復旧が発生した際、その費用の勘定科目をどう仕訳すればよいか迷っていませんか。
この記事では、パソコン修理やデータ復旧に関連する費用について、どのような勘定科目を使い、どのように仕訳をすればよいか、具体的なケースごとに分かりやすく解説します。
本記事のポイント
- パソコン修理代を仕訳する際の基本的な勘定科目が分かる
- データ復旧や保守料、クラウド利用料などの適切な会計処理が分かる
- 個人事業主の家事按分や仕訳例が確認できる
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パソコン修理の勘定科目の基本
ここでは、パソコンの「修理」に関連する費用の基本的な考え方を整理します。
使用する勘定科目や、高額になった場合の税務上のルール、個人事業主と法人の仕訳例まで、会計処理の基本となる知識を解説します。
基本は修繕費
パソコンの「修理」については、「修繕費」で処理するのが一般的です。
重要なのは勘定科目の名称ではなく、その支出の実質です。
パソコン修理における「実質」とは、その支出の目的が資産の「原状回復」(元の機能に戻すこと)であるかどうかという点です。
パソコンの部品交換や故障箇所の回復にかかった費用は、原状回復にあたります。
このような原状回復のための支出は会計上「収益的支出」とみなされ、発生した事業年度の経費として全額を計上することが認められています。
具体的には、パソコンの液晶画面の交換、反応しなくなったキーボードの修理、電源ユニットの交換、動作不良の調整費用などが、すべてこの「修繕費」に該当します。
「修理費」という科目を独自に設定することも考えられますが、一般的な会計ソフトを用い、税務申告を行う上では、原状回復の費用は「修繕費」で処理すると覚えておけば問題ありません。
高額な修理
修理代が高額になった場合、そのすべてを「修繕費」として経費にできるとは限りません。
注意したいのが「資本的支出」との区分です。
資本的支出とは、修理や改良によってパソコンの価値を高めたり、耐用年数を延長させたりする支出を指します。
例えば、通常の修理を超えて、明らかな性能向上のために高性能CPUへ換装する費用などが該当します。
資本的支出と判断された場合、その費用は「修繕費」ではなく、「工具器具備品」などの資産として計上し、取得価額に加算した上で、減価償却する必要があります。
ただし、税務上は明確な基準が設けられており、以下のいずれかに該当すれば、修繕費として処理することが認められています。
- 1件あたりの支出額が20万円未満の場合
- おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良である場合
さらに、修繕費か資本的支出か判断がつきにくい場合でも、次のいずれかに該当すれば、修繕費として処理することが可能です。
- 1件あたりの支出額が60万円未満の場合
- その支出額が、その資産の前期末時点での取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
なお、これらは修繕費として認められる但し書きであり、20万円以上の支出が直ちに資本的支出になるわけではありません。
あくまで実態(価値向上・耐用年数延長の有無)で判断します。
どうしても自分で判断がつかない場合は、税務署や税理士などに確認することをお勧めします。
参考:国税庁 タックスアンサー No.5402 修繕費とならないものの判定
スマホ修理代
業務で使用しているスマートフォンの修理代も、基本的な考え方はパソコンと同じです。
事業専用で使っているスマートフォンの画面割れ修理やバッテリー交換など、元の機能に戻すための費用は「修繕費」として処理します。
ただし、個人事業主の方が私用と兼用している場合は、「按分処理」が必要になる点に注意が必要です。
個人事業主の按分処理
個人事業主の方が、一つのパソコンやスマートフォンを仕事と私生活の両方で兼用している場合、修理代の全額を経費にすることはできません。
この場合、家事按分(かじあんぶん)という処理が必要になります。
家事按分とは、支出全体のうち、事業で使用した割合だけを計算して経費計上する方法です。
例えば、修理代が5万円かかり、パソコンの使用時間や日数など合理的な基準で計算した事業使用割合が70%だと説明できる場合、「5万円 × 70% = 35,000円」を「修繕費」として経費計上します。
この事業割合は、税務調査などで根拠を説明できるようにしておく必要があります。
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販売商品の修理と保証費用
修理の対象が、自社で使うパソコンではなく、販売する商品である場合は会計処理が異なります。
販売前の在庫修理
顧客に販売する前の商品が故障し、販売可能な状態に戻すために修理した場合、その費用は「仕入」勘定に含めるか、「売上原価」として処理するのが適切です。
これは、売上を得るために直接かかった費用とみなされるためです。
販売後の保証修理
商品を販売した後、保証期間内に無償で修理を行った場合の費用は、一般的に「販売費及び一般管理費」の中の「商品保証費」や「修繕費」として処理されます。
これは販売活動に付随して発生する費用としての性格が強いためです。
また、決算時に将来の保証修理を見積もり、「商品保証引当金」を計上している場合は、実際の修理費用が発生した際に、この引当金から取り崩す会計処理を行います。
仕訳例(個人事業主・法人)
ここでは、パソコン修理に関する具体的な仕訳例を見てみましょう。
例1:事業用PCの修理代3万円を現金で支払った
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 修繕費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
例2:兼用PC(事業割合50%)の修理代2万円を口座振込(個人事業主)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 修繕費 | 10,000円 | 普通預金 | 20,000円 |
| 事業主貸 | 10,000円 |
例3:PCの性能向上(資本的支出)30万円が未払い
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 工具器具備品 | 300,000円 | 未払金 | 300,000円 |
なお、 未払金で処理した費用は、後日、口座から引き落とされた場合に、借方(未払い金)/貸方(普通預金)というように仕訳を行います。
なお、この処理は、クレジットカードで支払いを行う場合の基本的な形となります。
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PC関連費用(購入・保守・データ復旧)の勘定科目
パソコンまわりの支出は修理だけではありません。
ここでは、機器の「購入」や「データ復旧・保守」といった、修理以外の関連費用の勘定科目について解説します。
修理費の判断基準(20万円基準など)と、購入時の判断基準(10万円基準)を混同しないよう注意が必要です。
PC・HDD・NASなどの購入
修理ではなく、パソコンや周辺機器を「購入」した場合、勘定科目は取得価額10万円を基準に判断します。
これは税務上、10万円未満の資産は「少額資産」として、購入した年に一括で経費処理することが認められているためです。
10万円未満の場合
外付けHDDや安価なノートパソコン、NAS(ネットワーク接続ストレージ)など、取得価額が1件あたり10万円未満のものは「消耗品費」として購入時に全額を経費計上します。
10万円以上の場合
取得価額が10万円以上のパソコンやNASは、「工具器具備品」として固定資産に計上して減価償却により経費計上するのが基本です。
この場合、購入時に全額を経費にすることはできず、法定耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。
ちなみに、法定耐用年数はパソコンが4年、周辺機器は5年とされています。
NASも一般的にはこの「周辺機器」に準じて5年で処理されますが、機器の性状や用途がサーバーに近い場合は区分が変わる可能性もあります。
判断に迷う場合は、耐用年数表の類別と実際の用途で確認するようにしてください。
ただし、一定の要件を満たす中小企業等については、節税上有利な特例も利用できます。
たとえば、「少額減価償却資産の特例」を適用できる場合、30万円未満の資産であれば年間300万円まで、購入年度に全額を経費計上することが認められています。
また、特例を使わない場合でも、「一括償却資産」として、20万円未満の資産を3年間で均等に費用計上する方法もあります。
これらの制度を活用することで、柔軟に費用化のタイミングを調整でき、資金繰りや節税効果の最適化につながります。
データ復旧・HDD廃棄の費用
パソコン本体の修理とは別に、データに関連するサービス費用も発生します。
データ復旧サービス
HDDの破損などで専門業者に「データ復旧」を依頼した場合、これは物理的な修理とは少し性質が異なります。
実態に応じて、「修繕費」(資産の維持管理の一環とみなす場合)または「支払手数料」や「業務委託費」(データ救出という役務対価とみなす場合)として処理します。
特にパソコン本体の修理は伴わず、データ救出のみを依頼した場合は、後者の方が実態に近いとも考えられます。
データ消去サービス
パソコンを廃棄する際に、情報漏洩を防ぐためにデータ消去を依頼した場合、この費用は「支払手数料」や、他の科目に当てはまらない一時的な費用として「雑費」で処理するのが一般的です。
システム保守・サポート料
会計ソフトの年間保守料や、業務システムの月額利用料、トラブル時に対応してもらうテクニカルサポート料などは、定期的に発生するサービス(役務提供)への対価です。
これらは「支払手数料」として処理するのが最も分かりやすいでしょう。
企業によっては、実態に合わせて「通信費」や「保守費」といった勘定科目を設定し、継続して処理している場合もあります。
AppleCare+など延長保証の仕訳
iPhoneやMacBookなどを購入する際、同時に「AppleCare+」のような延長保証サービスに加入することがあります。
この保証料は、将来のサービス(役務)の前払いとみなされます。
そのため、勘定科目は「支払手数料」や「保険料」として処理するのが適切です。
ただし、注意点があります。
保証期間が1年を超える契約(例えば2年契約)の場合、厳密には支払時に全額を経費にするのではなく、「前払費用」として資産計上し、決算時に当期分(1年目)を「支払手数料」などに振り替える(期間按分する)のが原則的な会計処理です。
なお、支払時から1年以内にサービスの提供が終わる前払い費用については、支払時に全額を経費として処理し、毎期継続適用することを条件に認められる「短期前払費用の特例」もあります。
まとめ
この記事では、パソコン修理やデータ復旧、関連するサービスの勘定科目について解説しました。
パソコン修理の勘定科目で迷った際の基本は、まず支出の目的を見極めることです。
故障を直して元の状態に戻す(原状回復)のであれば、原則として修繕費で処理します。
ただし、修理金額が高額になった場合は注意が必要です。
また、修理(20万円基準など)と、機器の「購入」(10万円基準)の金額基準を混同しないことも重要です。
10万円未満のPCやHDDは「消耗品費」、10万円以上は「工具器具備品」(資産)となります。
データ復旧やシステム保守、クラウド利用料といった「サービス」への対価は、実態に応じて「修繕費」「支払手数料」「通信費」などを使い分けます。
最も大切なのは、一度採用した会計処理のルールを、正当な理由なく変更せず、継続して適用することです。
パソコン修理やデータ復旧などの処理について、少しでも参考になれば幸いです。

