副業のパソコンは経費にできる!金額別の計上方法を解説

副業を始めた、あるいはこれから始めるにあたり、新しいパソコンの購入を考えている方も多いのではないでしょうか。

性能の良いパソコンは作業効率を上げてくれますが、決して安い買い物ではありません。

そこで気になるのが、このパソコン代は経費にできるのかという点です。副業で得た収入から正しく経費を差し引くことは、節税の第一歩となります。

この記事では、副業で使うパソコンを経費として計上するための具体的な方法や金額による違い、注意点について、初めての方にも分かりやすく解説します。

本記事の主なポイント

  • 副業のパソコン代が経費になる条件
  • 購入金額に応じた正しい経費の計上方法
  • プライベート兼用の場合の按分方法
  • 確定申告で失敗しないための注意点

副業の経費でパソコン代を計上する基本ルール

このセクションでは、副業で使うパソコンが経費として認められるかという基本的な問いに答え、どのような方が対象になるのかを解説します。

また、経費計上の最も重要な判断基準である「購入金額」によって、処理方法がどのように変わるのかを具体的に掘り下げます。

10万円未満から30万円以上まで、それぞれの価格帯に応じた正しい会計処理を理解し、ご自身の状況に最適な方法を見つけるための土台となる知識を学びましょう。

購入金額 可能な経費計上方法 対象となる申告
10万円未満 ①消耗品費として一括計上 全員対象
10万円以上20万円未満 ①減価償却(4年)②一括償却資産(3年)③少額減価償却資産の特例(一括) ①②全員対象、③青色申告のみ
20万円以上30万円未満 ①減価償却(4年)②少額減価償却資産の特例(一括) ①全員対象②青色申告のみ
30万円以上 ①減価償却(4年) 全員対象

パソコンは雑収入の経費にできますか?

副業で得た雑収入(雑所得)の計算において、業務に使用するパソコンは経費として計上できます。

所得税を計算する際、年間の総収入金額から「必要経費」を差し引いて所得を算出することが認められています。そして、副業での収入を得るために直接かかった支出は、この必要経費に該当します。

例えば、Webデザイン、プログラミング、動画編集、Webライターといった副業では、パソコンは業務に不可欠な道具です。そのため、パソコンの購入費用は事業を行う上で直接必要な支出と考えられます。

したがって、副業収入からパソコン代を差し引くことで、課税対象となる所得金額を低く抑えることが可能です。これが結果的に所得税や住民税の節税につながります。

サラリーマンでも副業の経費は計上可能

本業がサラリーマン(給与所得者)であっても、副業で生じた経費を計上することは全く問題ありません。

会社に勤めている場合、本業の給与所得については会社が年末調整を行ってくれます。

しかし、この年末調整はあくまで会社から支払われる給与に関するもので、副業で得た所得は対象外です。

副業による所得(事業所得や雑所得)が年間で20万円を超える場合、ご自身で確定申告を行う義務が生じます。

この確定申告の際に、副業の収入から、その収入を得るためにかかったパソコン代などの経費を差し引いて所得を申告します。

このように、本業の所得と副業の所得は分けて考え、副業に関する経費はしっかりと計上することが、正しい納税と節税の両立の鍵となります。

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10万円未満のパソコン

購入金額が10万円未満のパソコンは、「消耗品費」という勘定科目を使って、購入したその年に全額を経費として一括で計上できます。

取得価額が10万円未満の資産について、複雑な減価償却という手続きを経ずに、購入時に一括で費用処理することが可能です。このため、会計処理が非常にシンプルで分かりやすいのが大きな利点です。

例えば、8万8,000円(税込)のノートパソコンを購入したとします。この場合、確定申告の際に経費として8万8,000円を計上するだけで処理は完了です。

ただし注意点があります。消費税の納税義務が免除されている免税事業者の場合、この10万円という基準は、税抜価格ではなく「税込価格」で判断します。

税抜9万8,000円でも、税込で10万7,800円になってしまうと、この方法は使えないため気をつけましょう。

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購入額が10万以上のパソコン

購入金額が10万円以上のパソコンは、会計上「固定資産」として扱われます。

そのため、原則として「減価償却」という方法を用いて、数年に分割して経費を計上していく必要があります。

なぜなら、高額な資産は購入した年だけではなく、長期間にわたって事業に貢献し価値を生み出すと考えられるからです。

そこで、法律で定められた使用可能な期間(法定耐用年数)にわたって、購入費用を按分して計上するのが会計上のルールとなっています。

パソコンの法定耐用年数は、サーバー用途のものを除き「4年」と定められています。

仮に16万円のパソコンを購入した場合、単純に計算すると毎年4万円ずつを4年間にわたって「減価償却費」として経費に計上していくことになります。

購入した年に全額を経費にできない点はデメリットに感じるかもしれませんが、複数年にわたり安定して経費を計上できるため、年ごとの利益の変動を平準化させる効果も期待できます。

購入額が10万以上20万円未満のパソコン

購入金額が10万円以上20万円未満のパソコンの場合、経費の計上方法として主に3つの選択肢が考えられます。

一つ目は、前述の通り、法定耐用年数(4年)で分割して経費にする「減価償却」です。これは申告方法(白色・青色)を問わず、すべての方が選択できる原則的な方法といえます。

二つ目は、「一括償却資産」として処理する方法です。これも申告方法を問わず選択でき、取得した資産を3年間で均等に分割して経費計上します。

4年の減価償却より短期間で経費化でき、購入時期にかかわらず月割計算が不要なため、会計処理がシンプルになるのがメリットです。

三つ目は、青色申告を行っている方限定の「少額減価償却資産の特例」です。この特例を利用すると、取得価額が30万円未満の資産であれば、購入した年に全額を一括で経費として計上できます。

例えば、18万円のパソコンを購入したケースで考えてみましょう。

白色申告者であれば、「4年間の減価償却」か「3年間の一括償却資産」のどちらかを選択します。一方、事前に申請して青色申告の承認を受けている方であれば、この2つに加えて「少額減価償却資産の特例」も選択可能です。

その年の利益が多く出ており、所得を大きく圧縮したい場合は、特例を使って18万円全額を経費にするのが最も節税効果が高い方法です。

ご自身の申告方法やその年の利益状況に応じて、最適な方法を選択することが大切です。

青色申告者が使える「少額減価償却資産の特例」

青色申告を行っている個人事業主や中小企業者は、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、「少額減価償却資産の特例」という制度を活用できます。

この特例は、購入した年に取得価額の全額を経費として計上できる、非常に有利な制度です。

この特例を適用する場合、会計処理上は、まずパソコンを「工具器具備品」などの勘定科目で固定資産として計上します。

そして、その事業年度の決算時に、計上した資産の全額を「減価償却費」として費用処理します。これにより、実質的にその年の経費として全額を計上できるわけです。

例えば、28万円のパソコンを購入してこの特例を適用するなら、購入時に資産として28万円を計上し、決算で減価償却費として28万円を計上します。

ただし、この特例には注意点もあります。

一つは、適用できる資産の年間合計額が300万円までという上限があることです。

また、この特例は時限的な措置であり、現在のところ令和8年(2026年)3月31日までに取得した資産が対象ですが、法改正により延長される可能性もあります。

利用を検討する際は、最新の情報を国税庁のウェブサイトなどで確認することが大切です。

参考:国税庁 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

パソコンが30万以上になる場合

購入金額が30万円以上のパソコンは、これまで解説してきた「一括償却資産」や「少額減価償却資産の特例」といった特例制度の対象外となります。

したがって、経費として計上する方法は、法定耐用年数である4年間にわたって分割して費用化する「減価償却」の一択となります。

例えば、動画編集や3Dデザインなどの専門的な作業のために48万円のハイスペックなパソコンを購入したとします。この場合、たとえ青色申告者であったとしても、購入した年に48万円を一括で経費にすることはできません。

原則通り、法定耐用年数の4年間にわたって、毎年12万円(48万円÷4年)ずつを「減価償却費」として計上していくことになります。

高額な設備投資を行う際は、このように複数年にわたる長期的な経費計画が必要になるという点を理解しておきましょう。

副業で使うパソコンを経費にする際の注意点

パソコンを経費として正しく計上するためには、金額のルールだけでなく、いくつかの重要な注意点を押さえる必要があります。

このセクションでは、特に見落としがちな「プライベートとの兼用」の扱いや、その具体的な計算方法について解説します。

また、分割払いで購入した場合の会計処理など、実践的なケーススタディを通じて、税務調査などで指摘されるリスクを減らし、安心して確定申告に臨むための知識を身につけます。

プライベート兼用の経費は家事按分が必要

副業とプライベートの両方で一つのパソコンを使用する場合、その購入費用や関連費用を全額経費にすることはできません。事業で使用した割合に応じて経費を算出する「家事按分(かじあんぶん)」という計算が必要になります。

なぜなら、税法上、経費として認められるのは、あくまで事業の収入を得るために直接関連する支出に限られるからです。プライベートな目的での利用分は、当然ながら事業の経費にはなりません。

もし、この区別をせずにパソコン代の全額を経費として計上してしまうと、それは「過大な経費計上」と見なされます。税務調査が入った際にこの点を指摘されると、修正申告や追徴課税の対象となるリスクがあります。

例えば、副業の資料作成と、プライベートでの映画鑑賞やゲームに同じパソコンを使っている場合、合理的な基準で事業利用の割合を算出し、その割合に応じた金額のみを経費として計上することが求められます。

事業分とプライベート分を分けて会計処理をする場合の勘定科目や仕訳については、以下の記事を参考にしてください。

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家事按分における適切な割合とは

家事按分を行う際の事業利用の割合について、法律で「何%にしなさい」という明確な決まりはありません。最も大切なのは、ご自身の事業の実態に即した、客観的かつ合理的な基準で割合を算出することです。

税務署から説明を求められた際に、「なぜこの割合になるのか」という根拠を明確に説明できることが鍵となります。

合理的な算出方法の例

一般的には、以下のような基準が用いられます。

  • 使用時間で按分する: これが最も客観的で説明しやすい方法の一つです。例えば、1週間のパソコンの総使用時間が40時間で、そのうち副業での使用が30時間だった場合、事業割合は「30時間 ÷ 40時間 = 75%」と算出できます。
  • 使用日数で按分する: 例えば、週のうち平日の5日間は副業で必ず使用し、土日の2日間はプライベートでしか使わない、という明確な区分けがある場合、「5日 ÷ 7日 ≒ 71%」を事業割合とすることも考えられます。

どちらの方法を選択するにせよ、手帳やアプリなどで簡単な作業記録を残しておくなど、算出の根拠となる資料を保管しておくと、より申告の信頼性が高まります。

分割払いで買う場合

パソコンをクレジットカードの分割払いやショッピングローンで購入した場合でも、問題なく経費として計上できます。

会計処理の原則として、費用の計上タイミングは、現金を支払ったタイミングではなく、資産を取得したタイミング(この場合はパソコンが手元に届き、事業で使えるようになった日)を基準とするためです。

例えば、24万円のパソコンを12回の分割払いで購入したとします。この場合でも、購入した年に青色申告者が「少額減価償却資産の特例」を適用すれば、その年に24万円の全額を経費として計上することが可能です。

その際の仕訳は、まず購入時に借方に「工具器具備品 240,000円」、貸方に「未払金 240,000円」として資産と負債を計上します。そして、実際に毎月の支払いが行われるたびに、借方に「未払金」、貸方に「現金預金」として、負債を減らしていく処理を行います。

このように、支払いが翌年以降にまたがったとしても、経費計上自体は購入した事業年度に行う、という点を覚えておきましょう。

まとめ

この記事では、副業で使うパソコンの経費計上について解説しました。パソコン代は、副業の経費として認められますが、その計上方法は購入金額によって大きく異なる点を理解いただけたかと思います。

10万円未満であれば消耗品費として一括計上、10万円以上であれば原則として4年の減価償却が基本です。

しかし、青色申告者であれば30万円未満まで一括経費にできる「少額減価償却資産の特例」という節税策も選択肢に入ります。ご自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。

また、パソコンをプライベートでも使用する場合は、「家事按分」を忘れずに行いましょう。使用時間など合理的な基準で事業割合を算出し、その根拠となる記録を残しておくことで、安心して申告できます。

領収書やレシートの保管も、5年~7年間は義務付けられていますので注意が必要です。

  • 青色申告者:帳簿・書類とも原則7年
  • 白色申告者:帳簿7年・書類5年

これらのルールを正しく理解し、適切に経費を計上することで、健全な副業運営と賢い節税を実現できます。

もし判断に迷うことがあれば、税務署や税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。

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