今回の記事では、セルフメディケーション税制について取り上げます。
この制度を利用することで、確定申告の際に所得税や住民税の控除を受けることができますので、セルフメディケーション税制の基本的な知識や注意点、確定申告の際の手続きの仕方などを確認していただければと思います。
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セルフメディケーションとは?
セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例として施行された新しい制度です。平成29年1月から平成33年12月までの期間限定となっています。
この特例は、病院に行かずに自分自身で病気を治そうとする人や健康管理をする人に対して税金面で優遇することを目的としています。
対象者について
セルフメディケーション税制の対象となる人は、適用を受けようとしている年に健康を維持したり病気の予防に際して「一定の取組」をしている納税者です。
ここで気になる表現は「一定の取組」ですよね。
この「一定の取組」に該当すれば、セルフメディケーション税制の対象となります。一例としては下記のようなものがあげられます。
- 勤め先で定期健康診断や人間ドックを受けている
- 市町村で特定健康診査やがん検診を受けている
- インフルエンザなどの予防接種を受けている
参照:国税庁 No.1129 セルフメディケーション税制
こうしてみると、一定の取組といっても決してハードルが高いわけではなく、多くの方が対象となることをご理解いただけると思います。
注意が必要な点としては、任意で受けた健康診査についてです。任意の場合は、保険の適用外となりますので全額自己負担することになりますし、セルフメディケーション税制の対象とならないのでご注意下さい。
対象となる納税者が、自分自身や生計を一にする配偶者もしくは親族に対して、特定一般用医薬品等購入費を支払った場合、一定の計算を行った上で所得控除を受けることができます。
配偶者や親族についての所得の要件などはありませんので、生計を一にする配偶者や親族の分であれば特定一般用医薬品等購入費を合算することができます。
対象商品について
特定一般用医薬品は、スイッチOTC医薬品とも表現されることがありますが、医療用からドラッグストアなどで購入できる転用された医薬品のことです。
スイッチOTC医薬品かどうかを確認する方法としては、商品のパッケージに下記の識別マークがあるかどうかを確かめて見ましょう。
商品に上記のマークが表示されていれば、スイッチOTC医薬品の対象商品です。
ただし、スイッチOTC医薬品の対象商品でも、このマークがついていないものもあります。
その時は、商品を購入後にレシートで確認することができます。
対象商品に関しては、目印がついています。
例えば◆や★などの印がついており、”◆や★印はセルフメディケーション税制対象商品”とレシートに記されています。
ただし、この方法では購入後にしか確認できませんので、対象マークが確認できない場合は、事前に店員さんに確認した上で購入されることをお勧めいたします。
もしこの記事をご覧になっている時点で、すでに今年医薬品を購入していてレシートを保存している場合は、セルフメディケーション税制の対象商品かどうかをレシートで確認してみて下さい。
ネットでも対象商品かどうかを調べることが可能です。厚生労働省のサイトでは、スイッチOTC医薬品の具体的な商品名を五十音順に確認できるので便利です。
参照:厚生労働省 セルフメディケーション税制対象品目一覧
控除額と計算方法について
セルフメディケーション税制の控除額の計算方法についてです。まずは、下記の計算式をご覧ください。
購入金額-補填された金額-12,000円=所得控除額
この計算式に基づいて、控除額を計算することになります。
この計算式からわかるように、年間にセルフメディケーション税制対象商品の購入額が12,000円以下であれば所得控除を受けることはできません。
最低でも12000円以上、対象商品を購入している場合が控除の対象となります。
ただし、保険などで補填された金額があれば、その分も差し引いて計算する必要がありますので、12,000円を超えていれば必ず控除額が発生するわけではありません。
上限も設定されており10万円までとなっていますので、最高でも控除額は88,000円となります。
セルフメディケーション税制のメリット
節税になる
医療費控除が適用できなくても、セルフメディケーション税制という医療費控除の特例で節税の余地が広がりました。これは納税者にとっては嬉しい制度です。
最高で、88,000円まで所得から控除することが可能となっていますので、対象商品を購入していることを証明するためにレシートはきちんと保管しておきましょう。
健康を保てる
この記事の最初の方でも取り上げた通り、セルフメディケーション税制の対象となる人は、健康を維持したり病気の予防に際して「一定の取組」をしている納税者でした。
セルフメディケーション税制の対象となるためには、健康維持や病気の予防に対する「一定の取組」を行うことになりますので、結果として健康に対する意識が高まったり健康を保つのにも役立ちます。
国にも貢献
ご存知の通り国民医療費は年々増加していて、今後も右肩上がりで増えていくことが予想されています。
セルフメディケーション税制が、新たに創設されたのも医療費抑制が理由の一つとなっているはずです。
私たち一人一人の健康意識の高まりや、実際に健康を維持することで国の財政にも貢献することができます。
セルフメディケーションの注意点
注意点としては医療費控除との兼ね合いです。医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一つを選択して適用することが可能です。
ですから、控除額が大きくなる方を選択するほうが節税効果が上がるのでお得です。
通常は、まず医療費控除が適用できるかどうかを考慮して、できない場合にセルフメディケーション税制が適用できるかを考慮する流れになります。
理由としては、スイッチOTC医薬品はセルフメディケーション税制限定の商品ではないからです。従来の医療費控除の対象ともなっていますから、上記の順番で考慮するのが合理的だと言えます。
ただし、納税者の所得額やスイッチOTC医薬品の購入額によって、どちらがお得か変わってきますのでご注意下さい。
以下に、一例をご紹介しますので参考にしていただきたいと思います。
①所得金額が200万円以上で、年間の医療費(15万円)スイッチOTC医薬品の購入額(8万円)だった場合
セルフメディケーション税制
80,000円-12,000円=68,000円
医療費控除
150,000円-100,000円=50,000円
この場合は、セルフメディケーション税制を適用したほうが、控除額が大きくなることがわかります。
②所得金額が200万円以上で、年間の医療費(15万円)スイッチOTC医薬品の購入額(5万円)だった場合
セルフメディケーション税制
50,000円-12,000円=38,000円
医療費控除
150,000円-100,000円=50,000円
この場合は、医療費控除を適用したほうが、控除額が大きくなることがわかります。
③所得金額が150万で、年間の医療費(15万円)スイッチOTC医薬品の購入額(8万円)だった場合
セルフメディケーション税制
80,000円-12,000円=68,000円
医療費控除
150,000円-75,000円=75,000円
この場合は、医療費控除を適用したほうが、控除額が大きくなることがわかります。所得額が200万円未満の場合は、医療費の控除額は10万円ではなくて総所得金額に5%を掛けて計算します。
このように、年間の医療費は同じでも納税者の所得やスイッチOTC医薬品の購入額によって、どちらを適用したほうが控除額が大きくなるかが変わってきますので、その点を踏まえて確定申告の手続きをされるようにお勧めいたします。
確定申告の手続きの流れ
最後に、確定申告の際の手続きの流れについてご説明します。3つの用紙に必要事項を記載します。
●セルフメディケーション税制の明細書
まずは、セルフメディケーション税制の明細書を準備します。
こちらからダウンロードできます。
① 確定申告に対応する年と氏名を書いた後、(1)に該当する取組内容にチェックをいれます。その下の(2)で○○病院などの発行者名を記入してください。
合わせて、一定の取組を行ったことを証明する書類を添付するのを忘れないようにして下さい。
② セルフメディケーション税制対象商品の内容と金額を記入します。購入したドラッグストアや薬局が複数店舗あればそれぞれの内容と金額を書いて、最後に全ての合計金額を右下のAとBに記入します。
③ ②のAとBの金額を対応する部分に記入して、A-Bの差引金額から12,000円を引いた金額をDの医療費控除額の欄に記入してください。Dの医療費控除額の金額を「確定申告書B 第一表」と「確定申告書B 第二表」の赤枠の部分に記入すれば完了です。
●確定申告書B 第一表
●確定申告書B 第二表
まとめ
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例で期間限定で利用できます。
セルフメディケーション税制の対象者は、健康維持や病気の予防に対する「一定の取組」を行っている必要があります。
年間で、スイッチOTC医薬品の購入額が12,000円~100,000円までが所得控除の対象となります。
スイッチOTC医薬品の購入額や納税者の所得金額によって、セルフメディケーション税制と医療費控除のどちらを選択する方がお得になるかが変わってきますのでご注意下さい。
確定申告の準備の際に役立つように、所得控除をお得に活用する方法や注意点について、一覧表でまとめた記事もありますので、よければそちらもご覧ください。