数ある補助金の中でも、個人事業主にとって利用しやすい補助金が、今回取り上げる小規模事業者持続化補助金です。
この記事では、小規模事業者持続化補助金に関する基礎知識が学べます。
また、この補助金のメリットやデメリットについても確認することができます。
小規模事業者持続化補助金は、大半の個人事業主が利用することができる補助金ですから、記事の内容を最後までご覧いただき利用を検討して下さい。
小規模事業者持続化補助金とは
補助金といえば、コロナ禍で一躍注目を浴びた印象がありますが、小規模事業者持続化補助金の制度はコロナ禍以前からありました。
中小企業庁のサイトでは、小規模事業者持続化補助金について次のように説明されています。
小規模事業者等が、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取組や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化の取組を支援するため、経費の一部を補助するものです。
引用:中小企業庁
小規模事業者持続化補助金は、売上や利益を増やすための事業主の取り組みにかかる経費の一部を、国が補助金でサポートしてくれるお得な制度です。
事業を営んでいる個人事業主などの小規模事業者であれば、多くの場合売上や利益を増やしたいと考えて事業のさらなる発展に取り組んでいるはずです。
ですから、大半の小規模事業者の方が、小規模事業者持続化補助金を申請できると思われます。
この補助金は、「小規模事業者」に該当すれば申請が可能で、採択された場合は一定の経費の補助が受けられます。
小規模事業者持続化補助金は、基本的には2/3の補助率となっています。
補助金額には、申請類型によって上限額が決まっていますが、50万円~200万円の補助が受けられるので、売上や利益を増やしたい事業主であれば利用を検討することをお勧めします。
小規模事業者に該当するかどうかは、業種により以下のように定められています。
業種 | 小規模事業者に該当する条件 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業は除く) | 常時使用する従業員の数が5名以下 |
製造業・その他 | 常時使用する従業員の数が20名以下 |
宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20名以下 |
ただし、小規模事業者に該当しても、この補助金を利用するためには、持続的な経営に向けた経営計画を作成する必要があります。
中小企業庁のサイトで説明されているように、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等や業務効率化の取組を支援することを目的としているからです。
申請を希望する事業主は、事業計画(経営計画と補助事業計画)を作成する必要があります。
小規模事業者持続化補助金の申請が採択されるためには、事業計画(経営計画と補助事業計画)が最も重要と言われています。
書き方に関するポイントなどを理解していなければ採択される確率は低いです。
ですから、ネットや書籍などで事前に情報収集を行った上で自分で作成するか、時間が限られている場合は、一定の報酬を支払ってでも専門家にアドバイスを求めることも検討してみましょう。
小規模事業者持続化補助金の申請類型と補助金額の上限
小規模事業者持続化補助金には、通常枠と特別枠があり、申請類型によって補助される金額が異なります。
下記は、申請類型と補助金額をまとめた表です。
類型 | 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
---|---|---|---|---|---|
補助率 | 2/3 | 2/3(赤字事業者の場合は3/4) | 2/3 | 2/3 | 2/3 |
補助上限 | 50万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 |
通常枠よりも特別枠のほうが、補助金額が多くなるので、利用できる特別枠があるかどうかを確認してみて下さい。
申請類型の詳細は、下記の表の通りです。
類型 | 概要 |
---|---|
通常枠 | 小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会・商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓等の取組を支援。 |
賃金引上げ枠 | 販路開拓の取り組みに加え、事業場内最低賃金が地域別最低 賃金より+30円以上である小規模事業者 ※赤字事業者は、補助率 3/4に引上げるとともに加点を実施。 |
卒業枠 | 販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者 |
後継者支援枠 | 販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリストに選ばれた小規模事業者 |
創業枠 | 産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業の支援」を受け、販路開拓に取り組む創業した小規模事業者 |
インボイス枠 | 免税事業者であった事業者が、新たにインボイス発行事業者とし て登録し、販路開拓に取り組む小規模事業者 |
引用:全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック
補助対象の経費について
補助対象となっている経費については、次の11項目です。
- 機械装置等費
- 広報費
- ウェブサイト関連費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 設備処分費
- 委託・外注費
注意が必要な点としては、汎用性が高いものについては経費として認められなかったり、ウェブサイト関連費は補助金総額の1/4までしか認められないなどの制限があります。
申請を検討する場合は、経費として認められる対象や金額をよく確認するようお勧めします。
小規模事業者持続化補助金のメリット
小規模事業者持続化補助金を利用することの主なメリットについて解説します。
返済が不要
通常、資金を借り入れるとすれば、元本のみならず利息を含めて返済する必要があります。
しかし、補助金に関しては、借り入れとは違い返済が不要です。
もちろん、この記事で取り上げている小規模事業者持続化補助金も、返済する必要はありません。
ですから、資金繰りが厳しい状況であったとしても、この補助金を活用することで、新たな事業の立ち上げや、既存の事業の売上UPのための施策を打つことが可能になります。
事業の継続が可能になる
小規模事業者持続化補助金を受けることで、事業の継続が可能になります。補助金を活用することで、さまざまな経費の支出を抑えることができます。
これにより、コロナ禍の影響により経営が厳しくなっていた場合でも、事業を継続しやすくなります。
また、2023年10月からインボイス制度が開始されますが、その影響によって倒産に追い込まれる小規模事業者も増えるのではと懸念されています。
小規模事業者持続化補助金の申請類型には、「インボイス枠」があり最大100万円の補助が受けられます。
インボイス枠は、免税事業者から課税事業者として登録し、販路開拓に取り組む小規模事業者が申請できます。
小規模事業者にとっては、厳しい事業環境が継続するかと思いますが、このように事業を継続する上で活用できる補助金がありますので、売上の回復・拡大のために、小規模事業者持続化補助金の利用を検討しましょう。
新たな事業展開が可能になる
小規模事業者持続化補助金を受けることで、新たな事業展開が可能になります。
小規模事業者持続化補助金の目的は、小規模事業者の販路開拓等の取組や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化の取組を支援することです。
この補助金を活用することで、新しい商品やサービスの開発、新規顧客の獲得に向けた広告宣伝などに充てることができます。
これにより、既存事業の拡大や多角化などが可能になります。
このように小規模事業者持続化補助金を受けて販路開拓に取り組むことで、事業の持続性や競争力の向上につながるため、活用することを検討していただきたいと思います。
小規模事業者持続化補助金のデメリット
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓等を支援するための制度であり、利用するメリットは大きいですがデメリットも存在します。
これから、小規模事業者持続化補助金のデメリットについても解説します。
手続きが面倒
小規模事業者持続化補助金に限ったことではありませんが、補助金の手続きは面倒なものが多いです。
特に先程触れた、事業計画(経営計画と補助事業計画)の作成には多くの時間がかかります。
申請期限が決められていますので、遅れずに手続きをする必要もありますし、仮に採択されたとしても、後に事業効果の報告をする必要もあります。
補助金によって経費を補助してもらえるのは有り難いですが、手続きが煩雑であったり申請の準備に時間がかかることはデメリットと言えるでしょう。
必ず受け取れるとは限らない
補助金は助成金などと違って、一定の要件を満たせば必ず受け取れるお金ではありません。
時間をかけて申請の準備をしても、採択されない可能性があります。
ちなみに、第10回小規模事業者持続化補助金の採択結果は、2023年2月7日に発表されましたが、9844件の応募に対して6248件が採択されました。
約3社に2社が採択されていますので、決して低い採択率ではありませんが、時間をかけて申請しても必ず補助金を受け取れるわけではありませんのでご注意下さい。
前払いではなく後払い
小規模事業者持続化補助金は、前払いではなく後払いです。
申請した結果、採択されたとしても、すぐに入金されるわけではありません。
事業者が補助事業を実施し、実績報告書を提出した後、確定検査が実施され補助金額が確定します。
それから、事業者が補助金の請求を行なうことで、ようやく補助金が入金されることになります。
最初に、事業者の方で経費にかかる支出をすることになりますので、一定のまとまった現金を確保しておく必要があることを覚えておきましょう。
また採択後、提出した申請書に記載されている経費内容が精査され、その後に交付決定がなされますので、もし採択されたことが通知されても、交付決定通知書が届く前に経費にかかる支出をすると、その分は補助金の対象経費として認められませんのでご注意下さい。
まとめ
今回は、小規模事業者持続化補助金について取り上げました。
小規模事業者持続化補助金を活用することには、大きなメリットがあります。
デメリットもありますが、小規模事業者持続化補助金を活用すれば、事業の継続や発展につながる可能性があります。
補助金を上手に活用して、事業のさらなる発展や地域経済の活性化に貢献していきましょう。