国民健康保険料が高すぎる原因と対処法

  • 2020年3月20日
  • 2025年7月21日
  • 保険

「独立したら、国民健康保険料の請求額に驚いた」

「退職して収入が減ったのに、保険料が高すぎる…」

このような悩みを抱えていませんか。

会社員時代とは異なり、全額自己負担となる国民健康保険料は、家計に重くのしかかることがあります。

しかし、その仕組みを正しく理解し、適切な手続きを踏むことで、負担を軽くする方法があります。

この記事では、なぜ国民健康保険料が高すぎるのか、その根本的な理由から、具体的な計算方法、そしてあなたの状況に合わせた保険料を安くする方法まで、網羅的に解説していきます。

 

本記事のポイント

  • 国民健康保険料が高額になる仕組みと社会保険との違い
  • 所得や状況に応じて保険料を安くするための具体的な方法
  • 保険料を滞納してしまった場合のリスクと正しい対処法

 

なぜ国民健康保険料は高すぎるのか?仕組みと理由を解説

 

仕組みの文字

 

国民健康保険料がなぜこれほど高額に感じられるのか、その背景には、社会保険とは異なる独自の制度構造があります。

ここでは、保険料の基本的な仕組みから、高額になる理由、そしてあなたの保険料がどのように決まるのかを、一つひとつ丁寧に解き明かしていきます。

この章を読むことで、請求額の根拠が明確になり、対策を立てるための第一歩を踏み出せます。

 

そもそも国民健康保険料とはどんな制度?

 

国民健康保険料とは、主に自営業者やフリーランス、退職された方や無職の方などが加入する、公的な医療保険制度です。

会社員や公務員が加入する健康保険(社会保険)とは異なり、日本に住む社会保険の加入者以外は、原則としてこの国民健康保険に加入する義務があります。

この制度の最も大きな特徴は、保険料の負担方法にあります。

会社員が加入する社会保険では、保険料を会社と従業員が半分ずつ負担します。

一方で、国民健康保険は加入者が保険料の全額を自己負担しなければなりません。

これが、同じくらいの所得であっても、会社員時代より保険料が「高い」と感じる最大の理由です。

また、社会保険には「扶養」という概念があり、一定の収入以下の家族を扶養に入れることで、扶養されている家族の保険料負担は発生しません。

しかし、国民健康保険にはこの扶養の概念がなく、世帯の加入者一人ひとりに対して保険料がかかります。

そのため、家族の人数が多い世帯では、その分だけ保険料の負担が増加する仕組みになっています。

参考:我が国の医療保険について(厚生労働省)

国民健康保険料が高い理由

 

国民健康保険料が高額になる背景には、加入者の「医療費」が大きく関係しています。

端的に言えば、国民健康保険の加入者全体で使われる医療費が高いため、一人ひとりが負担する保険料も高くなるという構造があります。

厚生労働省のデータを見ると、国民健康保険加入者の一人当たり年間平均医療費が約36万円であるのに対し、大企業の会社員などが加入する組合健保では約18万円と、約2倍もの開きがあります。

この理由は、国民健康保険の加入者構成にあります。

国民健康保険には、定年退職後の高齢者や、比較的年齢層の高い自営業者が多く加入しています。

一般的に、年齢が上がると医療機関にかかる頻度も高くなるため、加入者全体の医療費が膨らむ傾向にあります。

この非常に高額な医療費を、現役世代の加入者が中心となって支えている、というのが現在の状況です。

 

国民健康保険の注意点

 

国民健康保険の注意点としては、保険料が「前年の所得」を基準に計算される点です。

例えば、会社を退職して収入がゼロになったとしても、保険料は会社員として高い給与を得ていた前年の所得で計算されます。

このため、現在の収入状況と請求額との間に大きなギャップが生まれ、「払えるわけがない」という事態に陥りやすいのです。

特に、収入が不安定なフリーランスにとっては、売上が良かった翌年に高額な保険料が請求され、資金繰りを圧迫するケースも少なくありません。

また、国民健康保険料は、所得に応じてかかる「所得割」のほかに、加入者一人ひとりにかかる「均等割」や、一世帯あたりにかかる「平等割」(採用していない自治体もある)があります。

この均等割や平等割は、所得がゼロであっても支払う義務があるため、低所得の世帯にとっては大きな負担となります。

こうした仕組みが、生活実感と乖離した制度への不満や疑問につながっていると考えられます。

 

国民健康保険料が高すぎる問題の解決策とQ&A

 

Q&Aの文字

 

保険料の仕組みや高額になる理由が分かったところで、次に具体的な解決策について考えていきましょう。

この章では、保険料の負担を合法的に軽減するための様々な方法から、万が一支払いが困難になった場合の対処法、そして多くの人が抱く疑問について、一つひとつ分かりやすく解説します。

 

国民健康保険料を安くする方法は?

 

個人事業主やフリーランスにとって、国民健康保険料は所得税や住民税と並ぶ大きな負担です。

この「高すぎる」問題を解決するための最も基本的かつ効果的な対策は、日々の事業運営に深く関わっています。

 

対策1:青色申告(最大65万円控除)を適用する

 

白色申告から青色申告に切り替えることは、節税だけでなく国民健康保険料の削減に絶大な効果を発揮します。

e-Taxで電子申告するなどの要件を満たせば、所得から最大65万円を控除できます。

この控除は、保険料の計算基礎となる「総所得金額等」を直接減らすため、保険料の所得割額が下がります。

例えば、所得割率が10%の自治体なら、これだけで年間約65,000円の保険料削減につながります。

 

対策2:必要経費を漏れなく計上する

 

事業所得は「売上 – 必要経費」で計算されます。

つまり、経費を1円でも多く、かつ正確に計上することが所得の圧縮に直結します。

通信費や交通費はもちろん、自宅兼事務所で仕事をしている場合は、家賃や光熱費の一部を事業経費として計上する「家事按分」を忘れずに行いましょう。

按分割合は、事業で使用している面積や時間など、客観的で合理的な根拠に基づいて設定することが大切です。

これらの対策は、国民健康保険料だけでなく、所得税や住民税の負担も同時に軽減できるため、すべての個人事業主がまず取り組むべき最も重要な戦略と言えます。

 

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対策3:別の健康保険制度に加入する

 

特定の条件を満たす場合は、国民健康保険以外の選択肢を検討できます。

  • 同業種の国保組合に加入する: クリエイターや建設業など、特定の職種には所得に関わらず保険料が定額の「国民健康保険組合」が存在します。高所得者ほどメリットが大きくなります。
  • 家族の社会保険の扶養に入る: 年間収入が130万円未満などの条件を満たせば、家族の扶養に入り、保険料負担をゼロにできます。
  • 会社の健康保険を任意継続する: 退職後2年間は、会社員時代の健康保険を継続できます。扶養家族が多い場合などに有利になることがあります。

 

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これらの方法に加え、所得が500万円を超えるような高所得の個人事業主の間では、法人を設立して社会保険に加入する「マイクロ法人」という、いわば節約の裏技も検討されることがあります。

ただし、これは設立・維持コストや手間がかかるため、専門家への相談が不可欠です。

 

無職・低所得の方は減免制度の活用を

 

失業や事業不振などにより収入が大幅に減少した、あるいは所得が低いにもかかわらず保険料の負担が重い、という場合には、国民健康保険に備わっているセーフティネット「減免制度」の活用を検討しましょう。

これらは申請が必要な場合が多いため、知っているかどうかが大きな差につながります。

 

所得に応じた自動的な軽減(法定軽減)

 

世帯の所得が一定の基準を下回る場合、申請しなくても自動的に保険料の「均等割」と「平等割」が7割・5割・2割のいずれかで軽減されます。

この軽減を確実に受けるためには、所得がない場合でも必ず住民税の申告を行うことが不可欠です。

申告がないと市区町村が所得を把握できず、軽減が適用されません。

 

事情に応じた申請による減免

 

各市区町村が条例で定める制度で、以下のような特別な事情がある場合に、申請することで保険料が減額または免除される可能性があります。

  • 所得の激減: 事業の倒産や失業などで、今年の所得が前年に比べて大幅に減少した場合。
  • 災害による被害: 火災や自然災害で住宅などに大きな損害を受けた場合。

 

非自発的失業者への特例軽減

 

会社の倒産や解雇、雇い止めといった非自発的な理由で離職した方(雇用保険の特定受給資格者など)は、極めて有利な軽減措置を受けられます。

申請により、保険料計算の基となる前年の給与所得を「100分の30」として計算してもらえます。

これにより所得割額が劇的に下がるため、対象となる方はハローワークで交付される「雇用保険受給資格者証」を持参し、必ず市区町村の窓口で手続きを行ってください。

 

国保が高いけど払いたくない!払わないとどうなる?

 

「保険料が高すぎる、払いたくない」という気持ちは痛いほど分かりますが、国民健康保険料の支払いを無視し続けると、深刻な事態を招くことになります。

保険料の滞納は、借金とは異なり、最終的には法的な強制力をもって財産を差し押さえられる可能性があるからです。

保険料を滞納した場合、一般的に以下のような段階を踏んで手続きが進みます。

  1. 督促状・催告書の送付: まず、納付を促す通知が届きます。この時点で延滞金が加算され始めます。
  2. 短期被保険者証の交付: 通常の保険証の代わりに、有効期間の短い保険証が交付されます。頻繁な更新が必要になります。
  3. 被保険者資格証明書の交付: さらに滞納が続くと、保険証が返還となり、代わりに「資格証明書」が交付されます。こうなると、医療機関での窓口負担は一旦10割(全額自己負担)となり、後日市区町村に申請して7割分を返してもらう形になるため、一時的な金銭負担が非常に大きくなります。
  4. 財産の差し押さえ: 最終的には、預貯金、給与、不動産などの財産が調査され、強制的に差し押さえられて滞納分に充当されます。

「払いたくない」と感じた時こそ、放置するのが最も危険な選択です。

支払いが困難な場合は、督促状が届く前に、お住まいの市区町村の国保担当窓口へ必ず相談に行ってください。

分割での納付や、前述の減免制度の利用など、何らかの解決策が見つかる可能性があります。

 

「国民健康保険料が高すぎる」知恵袋の疑問とQ&A

 

国民健康保険料に関する悩みは多くの人が抱えており、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトでも活発なやり取りが見られます。

しかし、そこには誤った情報や、特定のケースにしか当てはまらない回答も含まれているため注意が必要です。

ここでは、よくある質問と正しい知識を解説します。

 

Q1. 世帯分離をすれば保険料は必ず安くなりますか?

 

A1. 必ずしも安くなるとは限りません。

世帯分離とは、同じ住所に住みながら、住民票の世帯を分ける手続きです。

世帯の所得が合算されなくなるため、所得の高い家族がいる場合は保険料が下がる可能性があります。

しかし、逆に国民健康保険の軽減措置が受けられなくなったり、世帯ごとにかかる「平等割」をそれぞれの世帯で支払うことになり、合計額が高くなったりするケースもあります。

メリットとデメリットを慎重に比較検討することが大切です。

 

Q2. 会社を辞めたら任意継続と国民健康保険のどちらが得ですか?

 

A2. ケースバイケースです。

任意継続は、会社員時代の保険料(会社負担分も含む)を全額自己負担しますが、保険料の算定基礎となる給与に上限があり、また扶養家族が何人いても保険料は変わりません。

一方、国民健康保険は前年の所得に応じて保険料が決まり、扶養の概念がありません。

したがって、扶養家族が多い人や、所得が非常に高かった人は任意継続の方が有利になる傾向があります。

ご自身の状況に合わせて両方の保険料を試算し、比較することが重要です。

 

Q3. iDeCoやふるさと納税は国民健康保険料の節約になりますか?

 

A3. なりません。

iDeCo(個人型確定拠出年金)やふるさと納税は、所得税や住民税の計算においては所得控除や税額控除の対象となり、税金を安くする効果があります。

しかし、国民健康保険料の計算基礎となる「総所得金額等」からは控除されません。

この違いは非常によくある誤解なので、明確に認識しておく必要があります。

 

まとめ

 

この記事では、国民健康保険料が高すぎる理由から、具体的な計算方法、そして様々な角度からの削減策までを詳しく解説してきました。

最後に、あなたが今すぐ何をすべきかを整理し、行動に移すための最終チェックリストとしてまとめます。

まず、保険料が高額になるのは、社会保険と異なり「全額自己負担」であること、加入者の医療費水準が高いこと、そして「前年の所得」を基準に計算されるという仕組みが根本にあることを理解しましょう。

その上で、ご自身の状況に合わせて最適な対策を検討します。

もしあなたが個人事業主であれば、第一に「青色申告」と「経費の徹底管理」が最も効果的です。

所得が500万円を超え、さらなる削減を目指すなら、業種によっては定額保険料の「国保組合」への加入が極めて有力な選択肢となります。

もし失業や収入の激減で支払いが困難な場合は、決して放置せず、お住まいの市区町村の窓口で「減免制度」について相談することが不可欠です。

「非自発的失業者の特例」など、知っているだけで負担が大きく変わる制度もあります。

国民健康保険料は、正しい知識を持ち、適切な行動を起こせば、コントロール可能なコストです。

この記事を参考に、まずはご自身の状況を見直し、できることから一歩を踏み出してみてください。

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