【会計処理】ファクタリングの勘定科目と仕訳例

 

ファクタリングは、近年、注目を集めている資金調達方法です。

 

銀行融資を受けられない会社でも、ファクタリングであれば利用が可能なケースが多いことから、多くの会社がファクタリングの利用をしています。

 

しかし、ファクタリングの利用をする際の会計処理について、気になっている方は多いのではないでしょうか?

 

「ファクタリングを利用したは良いが会計処理をどうすればいいの?」

 

「ファクタリングはどの様な勘定科目を使って仕訳を行えばいいの?」

 

実際にファクタリングを利用された方の多くは、会計処理について悩まれているようです。

 

そこで今回は、ファクタリングの仕訳について説明します。

 

最初に仕訳の基本的なルールについて取りあげてから、代表的なファクタリングである、2社間ファクタリング・3社間ファクタリングを、それぞれ利用した場合の仕訳項目と会計処理について説明していきます。

 

「仕訳」とは?

 

 

仕訳とは、お金が出入りした「項目」を、借方(入金)・貸方(出金)に振り分け、適した「勘定科目」と呼ばれる「項目」を割り当てることを指します。

 

「売上」と「支出」を管理する際、どんな取引にもこの「仕訳」が発生します。

 

たとえば、「現金」で「車」を買ったとします。

 

仕訳には「貸方」と呼ばれる「出費したものや増えた負債を記載する項目」と、「借方」と呼ばれる「新たに増えた項目」が記載されます。

 

上記の例で言いますと、減った現金の金額を「貸方」に、増えた車の取得金額(資産額)を「借方」に記載します。

 

この「貸方」と「借方」は必ず金額を一致させる必要があり、「ファクタリング」を行った場合も例外ではありません。

 

「ファクタリングによって得た現金」「本来入るはずだった分との差額(ファクタリング手数料)」「ファクタリングによって売却した売掛債権」などに分けて会計処理を行います。

 

会計処理することで、現金や資産が帳簿上どういった動きをしているのか、それにより生じる影響などを確認することができ、事業を行う上で役立ちます。

 

ファクタリングの契約と入金が同時だった場合の会計処理(2社間ファクタリング)

 

2社間ファクタリングは、最短即日で現金を手にできる場合があります。

 

ファクタリングの契約と入金が同時の場合、以下の2回に分けて仕訳が必要です。

 

  1. 売掛金発生時
  2. 入金時

売掛金発生時

 

借方金額貸方金額
売掛金100,000売上100,000

 

売上が発生して後日入金される場合は、売掛金の勘定科目を使って仕訳を切ります。

 

ファクタリングは、この売掛債権を保有していないと利用できません。

 

もし売掛債権がないのに取引をしようとする業者がいた場合、「ヤミ金」の可能性がありますのでご注意下さい。

 

ファクタリング契約と売掛金譲渡代の入金時

 

借方金額貸方金額
普通預金80,000売掛金100,000
売掛債権売却損20,000

 

即日入金された場合は、上記のように売掛金という資産の減少、普通預金にファクタリング会社から入金、差額を売掛債権売却損で処理します。

 

もし、入金が数日以降になる場合は、一旦ファクタリング契約時に未収入金の勘定項目で処理を行います。

 

そして、数日後の入金時に、未収入金を減らす処理を行います。未収入金を使った仕訳に関しては、3社間ファクタリングの仕訳例でご説明していますので参考にして下さい。

 

ファクタリングを利用した場合の会計処理(3社間ファクタリング)

 

最初に、3社間ファクタリングを利用した会計処理を取り上げます。

 

3社間ファクタリングは、次の3つのタイミングで仕訳を切ることになります。

 

  1. 売掛金発生時
  2. ファクタリング契約時
  3. 売掛金の入金時

 

売掛金の発生時とは、取引先に「いつまでに○○円払ってください」という旨の連絡をしたタイミングのことです。

 

ファクタリングの契約時とは、売掛債権の譲渡契約を結んだタイミングになります。

 

売掛譲渡代の入金時は、売掛債権の買い取り金額が現金として、入金されたタイミングのことです。

 

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

売掛金発生時

 

借方金額貸方金額
売掛金100,000売上100,000

 

売掛金発生時の仕訳は、売り上げが発生したという内容を計上している状態です。

 

ファクタリング契約時

 

借方金額貸方金額
未収入金100,000売掛金100,000

 

ファクタリング契約時の借方は、まだ入金がないので「未収入金」と言う勘定科目を使います。

 

売掛金の入金時

 

借方金額貸方金額
普通預金80,000未収入金100,000
売掛債権売却損20,000

 

売掛債権売却損を計上する場合は、上記のように記載します。

 

ファクタリング業者から振り込まれた金額は普通預金、そしてファクタリング業者に支払った手数料である売上債権売却損の合計が、未収入金の金額と一致します。

 

売上債権売却損は、ファクタリング会社に支払った手数料にあたります。

 

ファクタリングの取引に消費税はかかるのか?

 

結論から言いますと、ファクタリング取引に消費税はかかりません。

 

通常の取引の場合 ファクタリングを利用した場合
1⃣100万円の商品を納入

2⃣100万円の売掛債権が発生

3⃣○月後に110万円が入金→消費税10%が含まれた金額

1⃣100万円の商品を納入

2⃣100万円の売掛債権が発生

3⃣ファクタリング手数料10%で売掛債権を売却

4⃣ファクタリング会社から90万円が入金→非課税のため、手数料は100万円×10%で算出される

 

ファクタリングは、金銭債権の譲渡という形になりますので、「非課税取引」となります。

 

具体的には、主な17の非課税取引の1つにある「有価証券等の譲渡」に当たります。

 

有価証券等の譲渡には、国債や株式の譲渡だけでなく金銭債権などの譲渡も含まれます。

 

詳細は国税庁のサイトで確認することができます。

 

参照:国税庁 No.6201 非課税となる取引

 

ファクタリングの仕訳に関するよくある質問

 

 

「売掛債権譲渡損」の項目がない場合はどうするの?

 

会計ソフトなどによっては、「売掛債権譲渡損」という勘定項目が存在しない場合があります。その場合は、自分で勘定科目を設定することもできますが、次のような勘定科目で仕訳をすることもできます。

 

  • 雑損失
  • 債券割引料
  • 支払手数料

 

一番汎用性があるのは「雑損失」です。

 

ただし雑損失は便利ですが、この勘定科目の金額が大きくなりすぎると、経費の内訳がわかりにくくなるので、税務署から目をつけられやすいとも言われています。

 

できるだけ、通常使用されている勘定科目で会計処理するように心がけましょう。

 

ちなみに、雑損失と似ている勘定科目に雑費があります。

 

雑損失は、本業の売上以外で発生した経費のうち金額が少ないもの、雑費本業の売上で発生した経費のうち、わざわざ他の勘定科目を設定するほど取引回数や金額が多くない場合に使用します。

 

ファクタリングの勘定科目は「割引料」でも良いの?

 

結論から言いますと、ファクタリングの勘定科目は割引料でも問題ありません。

 

手形割引を実施した際は、手形の満期日までの利息相当額が差引かれます。

 

この利息相当額を手形割引料といい、手形売却損の勘定科目に計上します。

 

ファクタリングにおいても、手数料相当部分が割引とも考えられるため、この勘定項目を利用しても問題はありません。

 

実務上、営業外損失で、かつ割引であれば整合性が取れるからです。

 

 また、2018年3月30日に企業会計基準委員会が「収益認識に関する会計基準」を発表しています。

 

以前は支払利息とともに「支払利息割引料」という勘定科目を使用していましたが、現在では会計上は「手形売却損勘定」の項目を使うことになっています。

 

ここまで「売上債権売却損」以外で使用可能な勘定科目について取り上げました。

 

もちろん、正しい「売上債権売却損」で処理する方が望ましいですが、仮に他の勘定科目を使ったとしても、最終的な納税金額が変わらなければ、どの科目で処理をしても大きな問題になることはありません。

 

まとめ

 

今回は、ファクタリングにおける仕訳について説明しました。

 

ファクタリングは、一般的な資金調達方法になりつつありますが、会計上どのように処理をすれば良いか分からない方も多いはずです。

 

今回の記事が、ファクタリングの会計処理の知識を深める点で役に立てば幸いです。

>個人事業主のお金に関する情報メディア「個人事業主プラス」

個人事業主のお金に関する情報メディア「個人事業主プラス」


主に個人事業主のお金に関する情報発信を通じて、ご覧頂く方のお役に立つメディアを目指しています。