「自分は個人事業主だから住宅ローンは通りにくいのではないか」と不安を感じていませんか?
会社員と異なり、事業の波があるフリーランスや自営業者は、一般的に審査が厳しいといわれています。
しかし、正しい知識と戦略を持てば、個人事業主でもスムーズに融資を受けることは十分に可能です。
所得の基準や審査のポイント、そして個人事業主にとって通りやすい銀行の選び方を知ることで、マイホームの夢はぐっと現実に近づきます。
この記事を読むことで、具体的に何について理解を深められるかは以下の通りです。
本記事のポイント
-
個人事業主が審査で不利になりがちな理由と対策がわかります
-
自営業者でも審査に通りやすい具体的な銀行や住宅ローンの種類を知ることができます
-
年収(所得)に応じた借入可能額の目安や4000万円借りるための条件を理解できます
-
審査落ちを防ぐための準備のポイントを学べます
ファイナンシャルプランナー2級・AFP、日商簿記2級、行政書士の資格保有者の個人事業主。詳細は運営者情報をご覧ください。

大手銀行(メガバンク)の審査に落ちてしまっても、諦める必要はありません。
金融機関によって審査基準やターゲット層は大きく異なるため、個人事業主に対して柔軟な姿勢を持つ銀行を選ぶことで、融資を受けられる可能性は格段に高まります。
ここでは、自営業者におすすめの具体的な銀行やローンの種類を紹介します。
通りやすい銀行とおすすめ住宅ローン
個人事業主が住宅ローンを選ぶ際、まずは「審査基準が明確」で「自営業の実情に理解がある」金融機関を候補に入れることが大切です。
一般的に通りやすいとされる銀行にはいくつかの傾向があります。
一つ目は、地方銀行や信用金庫です。
これらは地域密着型で、機械的なスコアリング審査だけでなく、個別の事業内容や将来性、経営者の人柄なども加味して柔軟に審査してくれる傾向があります。
メインバンクとして事業口座を持っている場合、日々の資金繰りが見えているため、信頼を得やすく審査に有利に働くことがあります。
二つ目は、一部のネット銀行です。
例えば、「SBI新生銀行」は商品説明書において、自営業者は「業歴2年以上、かつ2年平均300万円以上の所得」という具体的な申込要件を明示しています。
このように基準がはっきりしている銀行は、条件さえ満たしていれば審査に通る可能性が高く、無駄な審査落ちを避けることができます。
また、「PayPay銀行」や「楽天銀行」などは、個人事業主向けのビジネスローンも展開しており、自営業者のライフスタイルや資金事情に理解があるサービスを提供しています。
こうした背景を持つ銀行は、比較的相談しやすい土壌があるといえるでしょう。
住宅ローンの代表格フラット35
個人事業主にとって、審査に比較的通りやすく、利用しやすい住宅ローンの代表格が「フラット35」です。
住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している全期間固定金利型のローンで、公的な側面が強いため、自営業者に優しい独自の特徴を持っています。
フラット35の大きな特徴は、「人だけでなく物件の性能も重視する」という点です。
一般的な銀行ローンが個人の勤務先や属性を最重要視するのに対し、フラット35は購入する住宅の質(耐震性や省エネ性など)が基準を満たしているかをしっかり見ます。
もちろん、年収や返済負担率といった個人審査も行われますが、事業の形態に左右されにくい傾向があります。
また、審査における所得の評価も柔軟です。多くの銀行が直近3期分の平均所得を見るのに対し、フラット35は「直近1年分(前年度)」の所得だけで返済負担率を判定するのが一般的です。
取扱窓口によっては2期分の申告書が必要な場合もありますが、過去の赤字よりも直近の黒字を評価してくれる傾向があります。
さらに、個人事業主にとって大きなハードルとなる団信(団体信用生命保険)への加入が任意である点も見逃せません。
健康状態に不安がある場合でも、団信なしでローンを組むという選択肢が取れます。
安定した返済計画を立てやすい固定金利であることも、収入変動のリスクがある個人事業主には安心材料といえるでしょう。
個人事業主でも住宅ローンが通りやすい審査のコツと基準

個人事業主が住宅ローンを組む際、会社員とは異なる審査の「壁」が存在するのは事実です。
しかし、その壁の正体を知り、適切な対策を講じれば決して越えられないものではありません。
ここでは、なぜ審査が厳しいとされるのか、そして銀行は具体的にどこを見ているのかという基準について詳しく解説します。
個人事業主が落ちやすい理由
個人事業主が住宅ローンの審査で不利になりやすい最大の理由は、「収入の安定性」に対する金融機関の懸念です。
会社員であれば毎月決まった給与が保証されていますが、自営業やフリーランスの場合、景気や取引先の状況によって収入が大きく変動するリスクがあります。
また、多くの個人事業主が税金対策のために経費を多く計上し、課税所得(利益)を低く抑えていることも審査落ちの大きな要因となります。
住宅ローンの審査では、売上ではなく、経費を差し引いた後の「所得」が返済能力の基準として見られます。
そのため、手元にキャッシュが潤沢にあっても、決算書上の所得が低ければ「返済能力が低い」と判断され、希望額を借りられないケースが多々あります。
さらに、健康保険や年金の未納も審査においては致命的です。
給与天引きの会社員とは違い、自分で納付する必要があるため、うっかり滞納していると審査で極めて不利になります。
これらの情報は信用情報機関に直接登録されるわけではありませんが、提出書類である「納税証明書」などから未納が判明し、金融機関から「支払い能力や順法意識に問題あり」と判断されるためです。
これらの要因が複合的に重なり、「個人事業主は通りにくい」という現状を生んでいます。
実際は個人事業主でも借りられる!住宅ローンの主な審査基準
厳しいといわれる審査ですが、明確な基準をクリアしていれば個人事業主でも問題なく住宅ローンを借りることは可能です。
金融機関が審査で見ている主なポイントは以下の3点です。
所得の継続的な安定性
多くの銀行では、直近3期分の決算書(確定申告書)の提出を求められます。
単年だけ黒字でも評価されにくく、3期平均の所得や、直近の所得が基準となります。
一般的に、3期連続で黒字であり、かつ所得が安定または右肩上がりであることが理想とされます。
業歴(事業継続年数)
事業の持続性を測るため、開業してから「3年以上」経過していることを条件とする銀行が多いです。
しかし、後述するように一部の金融機関やフラット35などでは、より柔軟に審査してくれる場合があります。
返済負担率(返済比率)
年間の返済額が、所得(年収)に対してどの程度の割合を占めるかという指標です。
一般的に30%〜35%以内が目安とされます。
ここで重要なのは、分母となるのが「売上」ではなく「所得」である点です。
したがって、節税を過度に行わず、修正申告などで適正な所得を申告し直すことが、審査通過への近道となる場合があります。
金融機関に対して「事業が安定しており、長期的に返済可能である」という根拠を数字で示すことが何より大切です。
何年で住宅ローンが組めるか
「開業して何年経てば住宅ローンが組めるのか」という疑問を持つ方は多いですが、一般的な目安は「開業後3年以上」といわれています。
これは、多くの都市銀行や地方銀行が、事業の安定性を確認するために直近3期分の決算書を必須としているためです。
しかし、必ずしも3年待たなければならないわけではありません。
金融機関や商品の選び方次第では、開業後まもない時期でも住宅ローンを組める可能性は十分にあります。
例えば、公的な性質を持つ「フラット35」や一部のネット銀行、地方銀行では、業歴に関する要件が比較的柔軟です。
特にフラット35の場合、多くの取扱金融機関で直近2年分の確定申告書の提出が必要ですが、実際の返済負担率の判定は、直近1年分(前年度)の所得を基準に行うケースが一般的です。
そのため、過去に赤字の年があっても、直近の決算で黒字かつ一定の所得があれば、前向きに評価してもらえる可能性があります。
また、SBI新生銀行のように「業歴2年以上」と明記している銀行も存在します。
ただし、業歴が短い場合は、その分だけ信用力が低いとみなされるため、自己資金(頭金)を多く用意することや、事業計画の将来性を説明できる資料を準備するなどの工夫が求められます。
自分の業歴に合った金融機関を選定することが、早期のマイホーム購入を実現する鍵となります。
個人事業主は住宅ローンいくらまで組めるか
いくらまで借りられるかは、主に「返済負担率」によって決まります。
一般的に、無理なく返済できる借入額の目安は、年収(所得)の6倍〜7倍程度といわれています。
ここで注意が必要なのは、先ほども触れた通り、個人事業主の審査対象は「所得」であるという点です。
例えば、売上が1000万円あっても、経費を引いた後の所得が300万円であれば、審査上の年収は300万円として扱われます。
以下の表は、所得ごとの借入可能額の目安を整理したものです。(※金利等の条件により変動します)
| 所得金額(年収) | 借入可能額の目安(年収倍率7倍) | 返済負担率35%での年間返済上限 |
|---|---|---|
| 300万円 | 約2,100万円 | 105万円(月約8.7万円) |
| 400万円 | 約2,800万円 | 140万円(月約11.6万円) |
| 500万円 | 約3,500万円 | 175万円(月約14.5万円) |
| 600万円 | 約4,200万円 | 210万円(月約17.5万円) |
この表からもわかるように、3500万円借りるには所得は500万円以上、4000万円を借りるには所得600万円は確保しておくことが望ましいといえます。
もし現在の所得が足りない場合は、頭金を増やして借入額を減らすか、将来を見据えて節税を控え、所得を増やしてから申し込むといった長期的な計画が必要です。
住宅金融支援機構のシミュレーションなどを活用し、ご自身の所得で無理なく返済できる額を把握することをおすすめします。
個人事業主の住宅ローンに関するよくある質問

住宅ローン審査への不安から、多くの個人事業主が似たような疑問を抱いています。
ここでは、特によく検索されている質問に対して、プロの視点からわかりやすく回答します。疑問を解消し、自信を持って審査に臨みましょう。
個人事業主でも住宅ローンは通りますか?
個人事業主でも住宅ローン審査に通ることは十分に可能です。
確かに会社員に比べれば審査のハードルは高い傾向にありますが、「所得の安定性」と「返済能力」を証明できれば融資を受けられます。
特に、直近3期分の決算が黒字で安定していること、税金や社会保険料の滞納がないことが最低条件となります。
また、最初から大手都市銀行だけにこだわらず、地方銀行や信用金庫、フラット35など、個人事業主の審査実績が豊富な金融機関を選ぶことで、審査通過率は大幅に向上します。
個人事業主はやめたほうがいい年収はいくらですか?
住宅ローンを検討する際、「やめたほうがいい」とされる明確な年収のラインはありませんが、一般的に所得(経費を引いた後の利益)が300万円未満の場合は、借入の選択肢が狭まりやすいのが現実です。
所得が低いと、希望する借入額に対して「返済負担率」が高くなりすぎてしまい、審査に落ちる可能性が高くなるためです。
また、ギリギリ審査に通ったとしても、生活費の余裕がなくなり、返済が家計を圧迫するリスクがあります。
もし現在の所得が低い場合は、頭金を多く用意して借入額を減らすか、所得を増やしてから申し込むことを検討するのが賢明です。
個人事業主は何年でローンを組めますか?
多くの民間金融機関では、開業後3年(3期分の決算終了後)を申し込みの目安としています。
これは事業の継続性と安定性を判断するために、複数年の実績を見る必要があるからです。
しかし、フラット35では、返済負担率の判定に「直近1年分の所得」が用いられることが多いため、過去の業績よりも直近の収入状況を重視してもらえる傾向があります。
多くの窓口では2期分の決算書提出が必要ですが、業歴が浅くても相談に乗ってくれる金融機関を探してみる価値はあります。
個人事業主でもフラット35は審査に通りますか?
個人事業主でもフラット35の審査に通る可能性は比較的高いです。
むしろ、一般的な銀行ローンよりも個人事業主に適した住宅ローンといえます。
その理由は、前述の通り「前年度の所得」で返済負担率を判定することが多いため、過去の業績に左右されにくいことや、事業の形態や勤務先よりも「物件の担保価値」が重視されるためです。
実際に、他の銀行で断られた個人事業主の方が、フラット35で審査に通った事例は数多くあります。
まずはフラット35を取り扱う窓口で、事前審査を行ってみるのが良いでしょう。
まとめ
個人事業主が住宅ローンを組むのは難しいと思われがちですが、適切な準備と銀行選びを行えば、審査に通ることは決して不可能ではありません。
この記事で解説したポイントを改めて整理します。
-
審査は「所得」が命: 売上ではなく、経費を引いた後の所得が審査基準です。節税を控え、修正申告などで適正な所得を示すことが重要です。
-
フラット35は強力な味方: 業歴が浅い、または所得に不安がある場合、直近の所得を重視し審査基準が明確なフラット35が通りやすい選択肢の一つです。
-
銀行選びを工夫する: メガバンクだけでなく、地域密着の信用金庫や、基準を明示しているネット銀行(SBI新生銀行など)を検討しましょう。
-
準備が9割: 税金の未納をなくし、頭金を貯め、無理のない返済計画(目安は返済負担率30%以下)を立てることで、信用力は確実にアップします。
マイホームは、あなたの事業と生活の基盤となる大切な場所です。
個人事業主だからと諦めず、自分に合った金融機関を見つけて、理想の住まいを手に入れてください。