個人事業主の住宅ローン借り換えはできる?審査対策と銀行選びを解説

会社員時代に契約した金利の高い住宅ローンを払い続けているものの、現在は独立しており、個人事業主が住宅ローンの借り換え審査に通るのか不安に感じている方は多いのではないでしょうか。

毎月の固定費を削減し、教育費や老後資金を確保したいと考える一方で、収入の波や社会的信用の面で審査に落ちることを懸念して二の足を踏んでしまうケースは珍しくありません。

しかし、適切な準備と銀行選びを行えば、個人事業主であってもより有利な条件で借り換えることは十分に可能です。

この記事では、審査のポイントや対策を詳しく解説します。

本記事のポイント

  • 個人事業主の借り換え審査で重視される所得や事業の安定性

  • 審査に落ちやすい原因と事前に打つべき具体的な対策

  • 自営業者でも審査に通りやすい銀行やフラット35の活用法

  • 借入可能額の目安と無理のない返済計画の立て方

 

本記事は、当サイトの運営者が執筆しました。
ファイナンシャルプランナー2級・AFP、日商簿記2級、行政書士の資格保有者の個人事業主。詳細は運営者情報をご覧ください。

 

個人事業主の住宅ローン借り換え審査の実態

 

電卓と借り換えの文字

 

個人事業主が住宅ローンの借り換えを検討する際、まず直面するのが「審査の壁」です。

会社員とは異なり、事業の継続性や所得の安定性が厳しくチェックされるため、不安を感じる方も多いでしょう。

ここでは、個人事業主の借り換え事情や審査で落ちやすい理由、必要な業歴、そしてよくある失敗例とその対策について、実情を踏まえて解説します。

個人事業主でも住宅ローンの借り換えは可能

 

結論から言いますと、個人事業主であっても住宅ローンの借り換えは十分に可能です。

実際に、多くのフリーランスや自営業者が、高い金利から低い金利のローンへと借り換えを行い、総返済額の削減に成功しています。

ただし、会社員が源泉徴収票一枚で収入を証明できるのに対し、個人事業主は確定申告書や納税証明書など、複数の書類を用いて事業の安定性を証明しなければなりません。

金融機関側は「貸したお金が滞りなく返済されるか」を最も重視します。

したがって、単に年収(売上)が高いだけでなく、経費を差し引いた後の「所得」が安定して発生していることが審査の鍵となります。

また、近年ではネット銀行を中心に、個人事業主の働き方に理解を示し、柔軟な審査基準を設ける金融機関も増えてきました。

適切な書類準備と銀行選びを行えば、借り換えのハードルは決して越えられないものではありません。

個人事業主の住宅ローンが通りにくい理由

 

個人事業主が会社員に比べて審査が厳しいとされる背景には、主に「収入の不安定さ」と「社会保障の弱さ」があります。

会社員であれば、病気やケガで休職しても傷病手当金があり、失業しても雇用保険があるため、即座に返済が滞るリスクは低いと判断されます。

一方で、個人事業主にはこうした公的な後ろ盾が薄く、働けなくなれば収入が途絶えてしまう可能性が高いと見なされがちです。

また、審査の基準が「売上」ではなく「所得(利益)」である点も、審査落ちの大きな要因です。

節税対策として経費を多く計上し、課税所得を低く抑えている場合、税務署にとっては適正な申告であっても、銀行からは「返済能力が低い」と判断されてしまいます。

 

審査項目 会社員 個人事業主
収入の基準 額面年収(源泉徴収票) 所得金額(確定申告書)
安定性の評価 勤続年数や企業規模 過去3期分の収益推移
社会保障 手厚い(傷病手当等) 薄い(国民健康保険等)

 

さらに、直近の確定申告が黒字であっても、過去3年以内に赤字の年があると、事業の継続性に疑問を持たれ、審査で不利になるケースが多く見られます。

住宅ローンの借り換えができる条件は何年必要?

 

多くの民間金融機関では、事業の安定性を確認するために「開業後3年以上」の業歴を求める傾向があります。

これは、直近3期分の確定申告書の提出を求め、継続して安定した利益が出ているかをチェックするためです。

一般的には、3期連続で黒字であることが審査通過の一つの目安とされており、所得のアップダウンが激しい場合や、1期でも赤字がある場合は審査が厳しくなることが考えられます。

ただし、すべての銀行が3年以上の業歴を必須としているわけではありません。

一部のネット銀行やフラット35などでは、業歴が「2年以上」や「1年以上」でも申し込み可能な場合があります。

また、確定申告書も直近1〜2年分の提出で審査してくれる金融機関も存在します。

とはいえ、業歴が短い場合は、職務経歴書や事業計画書などを追加で提出し、将来の収益性を補足説明するなどの工夫が求められることがあります。

住宅ローンの借り換えで失敗した例と対策

 

借り換え審査で失敗する典型的な例として、「過度な節税による所得不足」が挙げられます。

この状態で審査に申し込むと、返済比率が高くなりすぎてしまい、借入可能額が希望に届かない、あるいは審査自体に落ちてしまいます。

対策としては、借り換えを計画した段階で、直近の確定申告における経費計上を見直し、適正な所得額を確保することが有効です。

一時的に税負担は増えますが、借り換えによる金利削減効果がそれを上回れば、トータルでのメリットは大きくなります。

また、「健康状態の悪化」により団体信用生命保険(団信)に加入できず、借り換えを断念するケースもあります。

年齢とともに健康リスクは高まるため、健康診断の結果に不安がある場合は、加入条件が緩和されている「ワイド団信」を取り扱っている銀行を検討するか、団信加入が任意であるフラット35を選択肢に入れると良いでしょう。

加えて、クレジットカードのリボ払いや自動車ローンなど、他の借入がある場合も審査に悪影響を及ぼします。

可能な限り、借り換え申し込み前にこれらを完済しておくことが望ましいです。

個人事業主の住宅ローン借り換えにおすすめの銀行

 

タブレットを使って説明する女性職員

 

個人事業主にとって、どこの銀行に申し込むかは審査通過を左右する極めて重要な要素です。

銀行によって審査基準や重視するポイントが異なるため、自分の状況に合った金融機関を選ぶ必要があります。

ここでは、自営業者でも比較的通りやすいとされる銀行の特徴や、おすすめの住宅ローン商品、そして独自の審査基準を持つフラット35について紹介します。

通りやすい銀行はどこ?

 

一般的に、メガバンクや地方銀行は審査基準が厳格で、3期分の黒字決算や一定以上の所得水準を求める傾向が強いと言われています。

対して、ネット銀行は店舗を持たない分、コストを削減して低金利を実現しているだけでなく、審査プロセスにおいてもAIを活用するなど、効率的かつ柔軟な対応をとるところが増えています。

特に、「住信SBIネット銀行」や「auじぶん銀行」、「楽天銀行」、「PayPay銀行」などは、個人事業主の申し込みも積極的に受け付けています。

これらの銀行の中には、確定申告書の提出を直近1〜2年分で済ませられる場合や、申告所得だけでなく実質のキャッシュフローを考慮してくれるケースもあります。

ただし、「通りやすい」といっても審査が甘いわけではありません。

書類の不備がなく、納税義務をしっかりと果たしていることが大前提です。

税金の滞納は審査において致命的なマイナス要因となるため、申し込み前に納税証明書を確認し、未納がないことを確実にしてください。

納税証明書の取得方法については、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用するとスムーズです。

参考:e-Tax 納税証明書の交付請求について

住宅ローンの検討項目

 

個人事業主におすすめの住宅ローンを選ぶ際は、「金利の低さ」だけでなく、「団信の内容」や「諸費用の安さ」も比較検討することが大切です。

例えば、「auじぶん銀行」は、がん診断時に住宅ローン残高が半分になる「がん50%保障団信」が金利上乗せなしで付帯されるなど、保障内容が充実しています。

身体が資本である個人事業主にとって、万が一の際の保障は大きな安心材料となります。「住信SBIネット銀行」は、全疾病保障が無料で付帯されるプランがあり、病気やケガで働けなくなった際のリスクヘッジになります。

また、事務手数料や保証料といった初期費用も無視できません。

ネット銀行の多くは保証料が無料ですが、事務手数料として借入金額の2.2%(税込)程度がかかることが一般的です。

借り換えのシミュレーションを行う際は、金利差によるメリットだけでなく、これらの諸費用を含めた総返済額で比較し、トータルで得をするかどうかを慎重に見極める必要があります。

フラット35は利用できますか?

 

民間金融機関の審査に通るか不安な場合や、過去に審査落ちしてしまった個人事業主にとって、強力な選択肢となるのが「フラット35」です。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供するこのローンは、公的な側面を持っており、自営業者やフリーランスに対して比較的間口が広いのが特徴です。

フラット35の審査では、事業の将来性や職種の安定性よりも、「物件の担保価値」と「返済負担率」が重視されます。

そのため、開業して間もない(業歴1年以上など)場合や、確定申告上の所得が低めの方でも審査に通る可能性があります。

また、民間ローンでは必須となることが多い団信への加入が任意であるため、健康状態に不安がある方でも利用可能です。

最大のメリットは、全期間固定金利であるため、将来の金利上昇リスクを完全に排除できる点です。

変動金利に比べて金利は高めに設定されていますが、計画的に返済を進めたい「守り」を重視する方には適しています。

さらに、審査時に前年の所得だけでなく、減価償却費などを所得に足し戻して審査してくれる場合があるなど、個人事業主特有の会計事情に配慮した審査基準を持っていることも大きな魅力と言えます。

詳細な条件は、住宅金融支援機構のサイトで確認できます。

参考:住宅金融支援機構

 

個人事業主の住宅ローン借り換え成功体験と金額の目安

 

通帳を見て喜ぶ男性

 

実際に借り換えに成功した個人事業主は、どのような準備をし、どれくらいの金額を借りることができたのでしょうか。

成功者の事例や口コミを知ることは、自身の借り換え計画を立てる上で非常に参考になります。

ここでは、インターネット上の知恵袋や体験談から見えてくる傾向と、借入可能額の現実的な目安について解説します。

住宅ローンに通った知恵袋の口コミ

 

Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトを確認すると、多くの個人事業主から借り換えに関する相談や審査結果の報告が寄せられています。

これら実際の声を分析すると、審査に通過した人にはいくつかの共通した傾向が見受けられます。

まず、「諦めずに複数の金融機関にアプローチした」という点です。

大手都市銀行では門前払いされたものの、審査基準が異なる「フラット35」や、地域に根ざした「地方銀行・信用金庫」に相談した結果、審査に通ったという事例が多く報告されています。

特に、対面で相談できる金融機関では、決算書の数字だけでなく、事業の実態や個人の信用力を総合的に評価してもらえたという声も存在します。

次に、「書類準備と納税実績を徹底した」という点も重要です。

審査に通った事例では、金融機関が重視する「直近3期分の確定申告書」や「納税証明書」を不備なく提出しているケースがほとんどです。

日頃から帳簿を正確につけ、税金の未納や滞納がない状態を維持していることが、結果として審査担当者に安心感を与え、プラスに働いたと考えられます。

いくらまで借りられるか

 

「いくらまで借りられるか」という借入可能額は、一般的に「返済負担率」によって決まります。

多くの金融機関では、年収(所得)に対する年間返済額の割合を30%〜35%以下に設定しています。

例えば、申告所得が400万円の場合、返済負担率35%であれば、年間返済額の上限は140万円(月額約11.6万円)となります。

金利や返済期間にもよりますが、概算で3,000万円〜3,500万円程度の借入が上限となる計算です。

しかし、これはあくまで「借りられる額」であり、「無理なく返せる額」とは限りません。

個人事業主はボーナスがない場合が多く、収入も変動しやすいため、できれば会社員よりも余裕を持った返済比率(20%〜25%程度)に抑えておくのが安全です。

自身の適正な借入額を知るためには、各銀行の公式サイトにあるシミュレーションツールを活用し、現在の所得で借り換え可能な金額を試算してみることをお勧めします。

無理な借入は将来の家計を圧迫するため、慎重な判断が求められます。

まとめ

 

この記事では、個人事業主が住宅ローンを借り換える際の審査ポイントや対策、おすすめの銀行について解説しました。

会社員に比べて審査のハードルが高いとされる個人事業主ですが、事業の安定性を証明する書類の準備や、経費と所得のバランス調整、そして自分に合った金融機関選びを行うことで、借り換えは十分に実現可能です。

借り換えに成功すれば、月々の返済額を減らし、将来のための資金を確保することができます。

まずは、現在のローン残高や金利状況を確認し、シミュレーションを行ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

諦めずに情報を集め、戦略的に行動することで、理想の返済プランを手に入れましょう。

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