ファクタリングを導入する企業は、近年非常に増えています。
ファクタリングを利用する主な目的は、当然ですが資金調達でしょう。
しかし、ファクタリングによって資金調達をすることによって、リスクマネジメントを高めるのに役に立つことをご存知でしょうか。
そこで今回は、ファクタリングとリスクマネジメントの関係について説明します。
わかりやすく説明しますのでぜひ参考にしてください。
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントは、よく話題になり、つい最近まで優良企業といわれた会社が、不祥事で経営危機に陥ったケースなどがでてくると注目される傾向にあります。
わが国においては、まだ企業実務においてリスクマネジメントの手法が確立されているとはいえませんので、企業の不祥事が発覚するたびに「当社のリスクマネジメントに手抜かりがあった」とか、また円安円高のために一喜一憂し、「当社の為替リスクマネジメントは大丈夫か」といった具合です。
リスクとは、自ら覚悟して犯す危険であり、事前に対処することが可能ですが、不測の事態への対応もリスクマネジメントは含みます。
リスクマネジメントとは、企業の存続や事業の継続にとって、企業の取り巻く様々なリスクを予見し、そのリスクがもたらす損失を予防するための対策を立案し、不測の事態、または制御できなかった場合の影響を可能な限り最小の費用で解決に導く経営手法です。
企業がリスクマネジメントの実施を検討する場合、その目的や対象とすべきリスクの種類や範囲によって、検討すべきリスクマネジメントも大きく異なってきます。
企業として取り組んでいく優先順位と対象範囲を明確にした上で、具体的な対応策を策定することが重要です。
企業を取り巻くリスクは多種多様にわたり存在します。
取引先の倒産、火災などの自然災害、賠償責任、労災事故、PL責任、海外駐在の安全問題、コンピューターセキュリティー、金利の変動等等の各種リスクを管理することの全てがリスクマネジメントの対象です。
たった1つの事故や過ちが原因で企業の信用を失い、倒産に起こ追い込まれる「不測事態」、「不確実性」も増大しています。
またリスクは「純粋リスク」と「投機的リスク」に分けることができます。
・純粋リスク
主として自然災害や偶発的な事象(例えば火災)より、リスクが顕在化したときには、常に損害のみが発生しうるリスク
・投機的リスク
リスクが顕在化したときには、損失が発生することもあるが、他方、利益のリターンも期待できる
純粋リスクには発生した場合、被害を最小限に軽減させる「企業危機管理」として、投機的リスクには経営意思決定により発生するリスクをあらかじめ想定されたシナリオに基づいて対応する「リスクコントロール」として取り組みます。
一方、企業経営から見るとリスクマネジメントは「企業の倒産を防止し、合理的な運営を図るためのリスク対応策」ともいえるわけで、ファクタリングはまさに「リスクヘッジ(一種の保険)」のための最も有効な対応策といえます。
最近不況によって売掛債権の貸倒リスクが高まっていることなどを背景に、ファクターの保証を得て回収リスクを少しでも回避しようというリスクヘッジが増加しています。
売掛債権を償還請求権なしで買い取るファクタリングは、リスクマネジメントの中核でありスクマネジメントそのものといえます。
リスクコントロールの手法
リスクコントロールの手法は主に4つに分かれます。
それぞれのコントロール手法についてわかりやすく説明しますのでぜひ参考にしてください。
リスクの回避
リスク発生そのものを回避する手法であり、あらかじめ準備したリスクの回避策を講ずることにより、損害をゼロにすることを可能にします。
売掛債権を売却し、将来発生するかもしれない不良債権を未然に防ぐファクタリングもその一例です。
損害の予防・低減
リスクの発生頻度を低減することにより損失の予防をし、マニュアルの徹底などリスクを人為的に低減することで損害を低減させます。
あらかじめ取引先を選別し、与信限度を設けた取引を行い、発生した場合は保険などで損失をカバーする手法です。
リスクの分散と分離
リスクを集中させず分散せることとリスクを分離する手法です。
前者では「特定の取引先ばかりに売り上げを頼らず、直販部門を持つ」とか、後者では「情報システム分野でバックアップ機能を別にする」といったケースです。
リスクの移転
本来自社で負うべきリスクを契約により他社に移転する手法です。
ファクタリングの支払い保証などが該当し、ファクターが債権引き当て企業における信用面の補完について民間損保との保険契約の締結などが挙げられます。
ファクタリングのリスク補完
企業サイドでは債権リスクの回避、移転、分散などにファクタリングを活用し、リスクマネジメントを享受できますが、ファクタリングを中小企業金融のシステムとして定着させるには、ファクターの原債権に対する公的機関の再リスクヘッジの仕組みが必要です。
ファクタリングは、債権者の資金調達やリスクヘッジニーズに応える金融手法ですが、同時に、債務者(中小企業が中心)の信用を補完することによって、円滑な商取引をサポートしているという一面があります。
しかし、ファクターが負担できるリスク量にはおのずと限界があり、それを再ヘッジするシステムがあればファクタリングはもっと拡大するはずです。
そこでファクターが行う中小企業の有する債権の買取に際して、債権が回収不能となった場合にその額の一部を保証する方法として、取引信用保険と信用保証協会など公的機関の信用保管が考えられます。
不動産などの物的担保に依存しないで民間金融機関から中小企業に円滑に資金が供給されるよう、売掛金債権担保保険の創設など、信用保険制度の拡充が行われ一歩前進していますが、早急にファクタリングの原債権の譲渡に係る信用保証制度が確立されることが望まれています。
情報管理がリスクマネジメントの第一歩
リスク管理は「リスクの認識」から始まります。
そのためにはリスクに関連する情報の収集がされていることが前提で、正確な情報なしにはリスクに対する対応は不可能です。
新規取引先との取引開始にあたって、どの程度の与信が可能か、ファクターの与信調査と情報提供がビジネスの発展を可能にします。
「取引先のA社が経営危機の状態にある」という信用不安情報が収集され、その真実が確認されると同時に、その結果、被る損害の予測などの危機判断があって初めて、「どのような対策をすべきか」というアクションにつながります。
リスクを発生させる要因には、管理、情報、時間の欠如が挙げられます。
もし状況を完全に管理できたり、プロセスの完全な情報を入手でき、しかもそれらに対応するための意思決定に十分な時間が与えられたならば、リスクにならないわけです。
したがって情報の収集、選別、管理する社内体制とシステムを整備し、リスク管理のための意思決定の仕組みを確立します。
トップ主導で社内組織とシステムを整備
営業の第一線は売り上げを上げることに最大の労力を使っているので、それをセーブする動きには同調しないことが多いわけで、与信管理が不良債権防止のためにも、強力な牽制機能と組織が必要です。
多少業務の重複が生じたり、無駄があっても、事前に危機をチェックし排除するシステムを築いた方が結果的に費用が安くつくからです。
しかし、多くの企業でマイナス情報を否定したりトップへの危機情報を中断させる動きが後をたちません。
例えば、独占禁止法で何回も摘発を受けながらも、カルテルに参加していたり、他社の顧客情報流出事件を横目で見ながら、自社のずさんな顧客情報管理を見直すことをしないといった例です。
こうした例から考えると、社内の牽制組織、危機排除組織が有効に機能するためには次の条件が揃う必要があります。
①トップダウンでの推進
企業や特定の事業におけるリスクマネジメントの基本は、経営トップがリスクの存在及びリスクマネジメントの重要性を認識し、企業内部に浸透させていくことが必要です。
経営トップが自社のリスクマネジメント方針を打ち出し、社内に徹底することが理想ですが、トップへのリスク情報のルートを確立することも欠かせません。
トップへ伝えなければならないのは、マーケティング情報や金融情報、財務情報以上に低く情報が優先します。
②リスクマネジメント専任担当の選定
経営トップの意思を受け、社内組織を通じて全社的なリスクマネジメント対応の共通認識がされることが最低限必要ですが、さらにこれを解決するためにリスクマネジメント業務を専担とする担当者を決め、全社的なリスクの把握・処理を一元的に管理することが効果的です。
③社内に事前チェック、排除機構を設置
社内に、販売管理(審査)、経理、法務、常任監査役などのリスクの事前チェック、排除の機構を設け、リスクに共通認識を持ち、権限を与える。
例えば営業担当から見て、販売管理部は「必要以上に信用調査が厳しく、これでは新規顧客の開拓はできない目障りな部門である」と感じているとすれば、まだ共通の危機認識はありません。
そうではなく、「販売管理部は、営業マンの気づかなかった新規取引先の問題点を出してくれるので、今後の営業姿勢にプラスになる。事前に危機を排除し、貸倒れを防ぐ有効な部分である」という共通理解が必要です。
④牽制、危機排除組織の担当者にプロとしての責任感と自覚があること
「どうせまた、営業に押し切られるのだから、計数分析と警告程度にし、後の判断はまかせよう」では、職務を果たしたことになりません。
ファクタリング導入後は大幅な業務の縮小が可能ですが、ルート販売を行う企業では一般的に次のような部門でリスク管理を行い、牽制組織となって活動しています。
・販売管理部門
与信のための信用調査、新規取引先のチェック、危険取引先の排除、要警戒取引先の継続的チェックを行います。
・経理部門
代金回収、不審な資金の動き、資金の対流、手形、小切手のチェックなどを行います。
・法務部門
社内外の取引行為、契約書などをチェックし、法的追求や訴訟に踏み切る案件はないかチェックし、一方で自社が関連法律に反していないか、告発、摘発の恐れがないかをチェックします。
リスク管理での監査役、社外取締役の役割
わが国の企業には欧米型のリスクマネージャーが存在していないというところが現実のようです。
経営トップがリスクマネジメント推進の責任があるのは当然ですが、一方、常勤監査役の役割も重要です。
監査役の任務として、会計監査に加え業務監査が重要なものになっていますが、リスク管理の観点から見ると、監査役はリスクを事前に排除するための機関といえます。
商法では監査役に対し、取締役が会社の事業目的にない行為や法令、定款違反を行うとしているときに、事前に差し止める権利を与えています。しかもその権限行使が少しでも容易にできるよう「仮処分」という強力な武器を与えているのです。
このような監査役の企業を防衛する任務から、会社によっては監査室を設け、リスク管理部門を集約し、関連監査スタッフの充実を期している会社もあります。
情報管理とコミニケーション
企業間電子商取引など、現在の企業経営は様々な関連企業と相互に依存しながら成り立っています。
サプライチェーンマネージメントなど一企業では解決できないシステムと相互依存、情報共有の上に成り立っています。
ファクタリングも決済手段・金融サービスが複数企業間をまたがって機能しています。
自らの企業に発生した事故・災害のみならず、これら関連する企業群に何らかの不調の事態が発生した場合にも、例えば下記のような事業活動に重大な影響が出る可能性があります。
- 一企業の情報の漏洩が関連企業全体の信用喪失につながります
- 下請け企業の事故で原材料が入手困難のため、工場の操業がストップします
- 主要顧客が倒産で連鎖倒産したり、不良債権の発生、在庫を抱え込みます
さらに、リスク管理上、コンピューターのデータ、社内文章管理の徹底が重要です。
社内全体に「文章」の恐ろしさを周知徹底させるだけでなく、社内文書の取扱規則、外部に簡単に流出しないルールを確立する必要があります。
顧客情報の流出、契約書のコピーがライバル会社、経理情報が総会屋といった、たった1枚の「文章」が企業へ大きな損害を与えることになります。
LANで社内情報は共有がされていますから、機密データのセキュリティー管理、社内文書のランク別保管、管理、社会への文書提出ルール等整備することが大切です。
最後に
今回の記事では、ファクタリングによるリスクヘッジが、リスクマネジメントを高めるのに役立つことを詳しく取り上げました。
リスクマネジメントとは、想定されるリスクを適切に管理し、損失を回避する一連のプロセスです。
ファクタリングを利用することによって、リスクマネジメントを高めることが可能です。
今後ファクタリングを利用するかどうかの検討をする際の参考になれば幸いです。