国際ファクタリングとは、日本国内の輸出業者が商品を輸出し、海外の企業が商品受け取り・支払いを行う際に発生する売掛金を、日本国内の業者が買い取るというシステムです。
ファクタリングという名称がついているものの、資金調達が主目的でなく、海外の業者から、売掛金(売上金)をキッチリと回収するために利用されます。
海外の業者の場合、未払いの発生や、与信(支払い能力)の調査など、さまざまな面で不安が残るケースが存在するため、このようなリスクに対応するために使われています。
そこで今回は、国際ファクタリングについて詳しく説明します。国際ファクタリングを利用する際の参考にしてください。
国際ファクタリングの流れ
国際ファクタリングは、通常のファクタリングと違い、下記の計4社が介在するのが特徴です。
- 輸出業者(ファクタリング利用者)
- 海外の輸出業者(支払いを行う)
- 日本国内のファクタリング会社
- 海外のファクタリング会社
ひとつひとつ流れを見ていきましょう。
①輸出企業と輸入企業が売買を行う
ここは、普通の輸出入商取引が発生する、というだけの話になります。
ファクタリングを行うのであれば、契約書や請求書などの書類は、通常の取引以上にキッチリと手配を行うようにしましょう。
②国際ファクタリングを利用することを通知する
次に、日本国内の輸出業者が国際ファクタリングを行う旨を、輸入業者に申請します。
これが断られる場合、もしくは国際ファクタリング審査に通らなかった場合、危ない取引先であるということになります。
③輸出企業から日本国内のファクタリング会社へ引受依頼
国際ファクタリングはあくまで、輸出業者主導で進めます。
いくつかの候補にあたりを付け、日本国内のファクタリング業者にファクタリングを依頼します。
④国内のファクタリング業者から海外のファクタリング業者へ引受依頼
申し込みを受けた国内のファクタリング会社は、輸入会社の現地にある海外のファクタリング業者(支社・もしくは業務提携している先)に、ファクタリングの引き受け依頼を行います。
これにより、現地のファクタリング業者が輸入業者の信用調査を行うことになります。
⑤調査結果の報告
輸入企業の信用調査を行い、問題がなければ、海外のファクタリング業者は日本国内のファクタリング業者に対し、国際ファクタリング(信用保証の引受受領)を伝えます。
重ねて言いますが、ここで引き受け不可となった場合、取引を考え直したほうが無難です。
⑥国内のファクタリング会社から輸出企業へ国際ファクタリングの依頼受領通知
この時点で契約を締結し、国際ファクタリングが始まります。
⑦輸出企業は契約どおりに商品の船積みを行う(輸出手続き)
ここまでは、あくまで輸出入業者間で売買契約の締結と同意をしていただけです。
ファクタリング引き受けが確定してから取引準備に入ります。
通常のファクタリングは取引が終わった後に利用するものなので、この点からも、ファクタリングという名前がついているものの、まったく別物であることがわかります。
⑧輸出企業は契約どおりに商品を船積みしたことの証明書類(「B/L等」)を提出
これをもって、国内のファクタリング会社へファクタリングを依頼します。
国際ファクタリングの流れでいうと、ここが必要書類の提出等などに当たります。
⑨輸入企業から海外のファクタリング会社へ支払い
国内ファクタリング業者より、引き受けを行った海外ファクタリング業者に、輸入企業から料金が支払われます。
⑩海外のファクタリング業者から国内のファクタリング業者へ支払い
輸入業者から受け取った料金を、日本国内のファクタリング業者に支払います。
⑪国内のファクタリング会社から輸出企業へ支払い
日本国内のファクタリング会社から輸出企業へ支払いが完了すれば、取引は終了です。
国際ファクタリングの比較対象になるものとして「信用状(L/C)」があります。
信用状(L/C)とは、日本の銀行および現地の銀行が中間に入って支払いを保証するシステムで、その資金もいわば貸付や手形に近いものです。
国際ファクタリングとL/Cは、形式は似ているものの、取引内容は全く別物といっていいほど異なります。
国際ファクタリングの場合、輸入企業の同意が必要ですが、L/Cの場合輸出企業に通知されるだけで、同意は必要ありません。
これはL/Cの場合、 万が一取引でトラブルが起きれば、その損害はL/Cを発行している銀行が被るためです。
それに対して国際ファクタリングは、荷積みが完了した時点で、前もって売掛金を回収する仕組みですので、損害を被るのはあくまで国際ファクタリングを依頼した輸入業者ということになります。
もっとも、取引の形式上、海外の現地ファクタリング会社も何らかの損失を被るリスクは存在しますが、最終的な責任の所在という意味で、L/Cとはまったく異なります。
次に、L/Cは輸出企業の与信枠をもとに信用状開設が必要なのに対し、国際ファクタリングは輸入企業の与信枠が審査されます。
これはL/Cが「売掛金を担保とした貸付」であるので、お金を借りる輸出企業が審査されるのに対して、国際ファクタリングが支払い能力を調査し、売掛金を購入者から回収するといったファクタリングであるため、支払いを行う輸入企業が審査されるという違いになります。
最終的に入ってくるお金と国際保証という意味では同じでも、手続きは完全に別物となります。
国際ファクタリングのメリットは3つ
国際ファクタリングのメリットは主に3つです。
- 売掛債権が100%保証される
- 信用状の開設が不要
- 書類送付による遅延が起きない
国際ファクタリングのメリットについてわかりやすく説明します。
売掛債権が100%保証される
事前に信用調査を行い、出荷した証明(B/Lなど)を提出した時点で売上請求が可能となるため、入金が早くなるだけでなく、売掛債権が100%保証されるというメリットがあります。
また、通常のファクタリングのように資金調達が目的ではないので、あくまで保証料を払うだけとなり、売掛債権の額面金額100%が保証されているというのも魅力です。
万が一、輸入企業がこの時点で支払いを行わなかった場合、出荷したもののまだ納品前である商品を回収し、販売料金の取りはぐれリスクを回避することができます。
多少の手数料は取られるものの、異国の地で料金が未払いになり、その後、国をまたいだ請求や回収・商品の返送手続き、場合によっては司法手続きなどといった、さまざまなリスクが発生するのを回避して、売掛債権分の料金を手にすることができます。
信用状の開設が不要
信用状(L/C)の場合、銀行で信用状開設と呼ばれる与信枠の割り当て審査にパスする必要があります。
それに対し、国際ファクタリングは取引の都度、国内ファクタリング業者を通して現地の海外ファクタリング業者が輸入企業の与信調査を行うため、こういった与信の開設は不要です。
国際ファクタリングは、あくまで輸入業者の信用調査と出荷した時点での売上相当金(売掛金)の徴収なので、国内ファクタリング業者にはリスクはほぼありません。
それに対し、信用状(L/C)はいわば銀行が貿易における支払い料金を保証するというシステムになっており、万が一トラブルが発生した場合、引受業者が損失を被る仕組みになっています。
そのため、やや厳しめの審査を行い、信用状の開設という行為が必要となります。
国際ファクタリングにおいては、これが存在しないというだけで大きなメリットとなります。
書類送付による遅延が起きない
信用状(L/C)を利用して貿易取引を行う場合、船積書類(B/L等)を信用状を発行している銀行を経由して送付するので、書類到着が遅くなるというデメリットがあります。
それに対して国際ファクタリングは、取引開始(出荷)から完了(商品到着)までの間に、ファクタリング業者を通して売掛金を売り上げとして現金化できます。
申し込みと与信審査というタイムラグは存在するものの、結果として現金が入ってくるのが早いというメリットがあります。
信用状や国際ファクタリングは、商品の運搬に時間がかかる海路での貿易に利用するため、タイムラグが発生しないというメリットはかなり大きく、輸出側にとっては大きな利益になります。
国際ファクタリングのデメリットは2つ
国際ファクタリングには、次の2つのデメリットが存在します。
- 手数料が高い
- 利用できる会社が少ない
デメリットをよく理解したうえで、利用を検討しましょう。
手数料が高い
L/C取引と比較すると、与信を通すのに必要な費用がかかるので高くなります。
国際ファクタリングの費用相場は、まず信用調査費として約1万円程度、さらにファクタリング手数料保証料として、請求書(インボイス金額)に対して約0.7~2.0%/月が相場となります。
それに対してL/C取引の費用相場は、保証料として約0.5~1.0%/年、あとは電信料として約1万円程度、最後に為替手数料がかかります。
最大約4倍程度のコストがかかりますので、この部分がネックとなります。
利用できる会社が少ない
国際ファクタリングに対応している会社は、三井住友・みずほ・三菱UFJなどの国内の大手ファクタリング会社だけです。
貿易となると、扱う物によっては数千万・数億円という金額になることも珍しくありません。
資金力が必要となるだけでなく、現地のファクタリング会社と業務提携、もしくは支社進出を行う必要があるため、それなりに規模がある会社でしか行えません。
国際ファクタリングは資金調達が目的ではなく、あくまで取引先の信用の補完、つまり貿易費用を取りはぐれないようにするための保険という位置付けです。
また仕組みもやや煩雑で敷居が高く、利用所総数自体も少ない、もしくはこの手間を許容できる規模の取引を行っている法人が対象となるため、ファクタリング業者の信用が求められます。
例に挙げさせていただいたファクタリング業者が、ほぼ銀行・金融機関系であることからもわかるように、利用者とファクタリング業者の双方に参入障壁が存在するのです。
まとめ
今回は、国際ファクタリングの仕組みやメリット・デメリットについて説明しました。
国際ファクタリングは、一般のファクタリングに比べかなり特殊なファクタリングになります。
国際ファクタリングを利用する会社は多くはないと思いますが、国際ファクタリングについて知っておいて損はありません。
今回の記事が、国際ファクタリングの理解を深める役に立てば幸いです。